
遠地点(アポジー)の夜 静止軌道より外で わたしは小さな衛星 借りた光を返している 昼の恒星圏では ただの影の天体 観測リストにも載らない 名もない裏面(ファーサイド) クレーターの縁に 静かなレゴリス 電波も届かず 深宇宙のノイズだけ それでも君は 推進剤を燃やして 軌道遷移を重ねながら この遠い圏まで来た Lunatic orbit 重力井戸の底 誰も来ない ラグランジュの影で Lunatic orbit 静かな軌道共鳴 わたしは月みたいに 弱い光を返すだけ 遠いトランスファー軌道 夜のケプラー曲線 真空の中を 君の船がすべってくる 姿勢制御スラスター 小さく瞬いて 航法コンピュータが わたしの座標を見つける ここはまだ 光の当たらない面 深いマーレに 長い夜が眠っている でも君は言う 距離なんてただのΔvだと そして軌道面を傾けて 裏の海まで降りてくる Lunatic orbit ファーサイドの海 誰も測らない最遠点に 君の灯りが触れる Lunatic orbit 静かな周回 わたしの暗い半球も 少しだけ明るくなる もし推力が尽きて 船が遠ざかっても このクレーターの底には 君の航跡が残る われ月なれど 太陽にはなれない それでも今夜 影がやわらいでいく Lunatic orbit 遠いアポジー わたしの裏側まで 君は来てくれた Lunatic orbit 終わらない楕円 この暗い軌道でも 光は回り続ける

