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■第6話最重要機密部隊IBO『お披露目』

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V5.5

■第6話『お披露目』 -ー週末、 新設された工場内での 新機種のお披露目会……。 そこに、 IBO隊が呼ばれていた。 真新しい匂いに、 ぎこちない結人。 先を歩く、 灰谷。 ひとだかりの先に、 新機種のシルエットが。 出遅れた結人が、 灰谷を追う。 目の前には 重金属の冷たい質感に 操作パネルの明かり。 「かなり大きいな?」 「全行程型なら、 大きくもなりますよ」 周囲の声が届く。 -ーそこに、 アナウンスが流れた。 「今回 導入した 業界初の、 最新 AI 搭載IBO-32-CHA型 『通称チャッピー』 加水量の調整、練り時間、回転速度、 温度・湿度への対応、均一化、生産速度、 職人の経験を数値化後 最適化し、 従来比38%生産向上が 見込まれます。」 結人には聞き慣れない 言葉が並んだ。 「品質上がるなら 職人いらないじゃないか」 「本当だな。ハハ…」 結人の顔に、 不安が過る。 「これ……俺たちの仕事、 比べられてませんか?」 隣の灰谷を見る。 「……どうですか?」 「見に来ただけだ」 いつもと変わらず、 無表情だ。 周りの声は この人に 届いてるのか? 自分は…… 疎外感しかない。 「では、 これから新機種の 実演を、 開始したいと思います。」 タッチパネル操作で 担当職員が入力をしていく。 すると… 『設定、完了。最適化。 シドウ、シマス。』 音声が流れた。 「おお、機械が話したぞ」 会場が 息をのむ。 「……動き出すか?」 重厚な造りの内部で “何か”が始まった。 想像よりも 静かな 始動音。 そこに、 後ろからの声。 「お。間に合ったみたいじゃな。」 初老をとうに越えた、 じいさんが現れた。 「灰谷くん、 ワシにも声がかかったで、 来てみたぞ。ほっほっ」 「お久しぶりです。仙人。」 たくわえたヒゲを撫で、笑う。 「灰谷っっ、 俺も視察に来たぜ」 継が、ひょこっと 姿をあらわした。 「結人、まだ続いてんのかよ、 意外と根性あったんだな。ハハ」 「ちゃんと続いてますっ なんで部外者が ここに居るんですか?」 「じっちゃんが会長に 招待されたんだよ」 会長の知り合いだったのか。 「お、見ろよ、すげぇぇ」 機械の小窓から中を覗きこみ、 継が声をあげる。 職人が何時間もかける作業を、 機械は、 迷いなく進めていく。 止まらない。 ためらわない。 同じリズムで、 同じ力で。 練りの工程も、 あっという間に通過していく。 ーーこんな短時間で……。 結人の喉が、 きゅっと鳴る。 あれほど 灰谷に止められた 『練り』 力の入れすぎも、 抜きすぎも 駄目だった。 それを機械は、 何の迷いもなく 終えていく。 全工程を終えた麺が、 ラインにのって 運ばれてくる。 白く、 細く、 均一な、麺。 会場から、 どよめきが起きた。 「新時代が来た……」 上層部は満面の笑みだ。 社員たちも、 浮き足だっている。 …IBO 隊メンバーだけは、 どこか表情が硬い。 「……速ぇ。」 小窓に張りついていた継が 呟く。 「けど…… ……何か、違う」 そこに、 上層部の3人が歩み寄り、 灰谷に、問いかける。 「どうですか?」 「……早いですね」 「職人の”勘“だよりの終わりの 時代がきたかな?ハハ」 その場の空気が、 固まった。 「待て」 仙人が、 あごひげを撫でながら 一歩前に出る。 顔は笑っているが、 目は笑っていない。 「同じ土俵に 並べるもんでもなかろう」 少し、ムッとする男。 「ですが、品質が同等なら、 判断基準は変わります」 その男は、 涼しい顔で言う。 「安定とスピード。 それは会社にとって 大きな価値です」 誰も、 言葉が出ない。 『価値』って なんだよ…… 重ねた努力は、 無駄なのか……? 「おい」 そこに継が、 低く言い放った。 「コイツらの麺、 食ったことあんのかよ」 「噂は、会長から聞いてますよ」 「噂じゃねぇよ。食えよ」 継の眉間に 皺が寄る。 結人が、 唾をのむ。 「……では、次の週末。 IBO隊の作業を視察し、 その後、 麺の食べ比べというのは どうでしょう?」 「た、食べ比べ……?!」 跳ね上がる結人。 「勿論、会長の承諾を得てからですが、 『口外禁止』の食べ比べ、です」 継がにやっと笑い、 結人の背中を叩いた。 「やっちゃえよ、結人! IBO隊の実力、 見せてやれ」 「は!? 俺!? ちょ、待ってください。 俺、まだ練りまでしか……!」 「まだ早い」 灰谷が、 静かに割って入る。 継が 振り向く。 「じゃあ、いつならいいんだよ」 灰谷は、 ラインに流れる麺に 視線をやる。 改めて 結人を見る。 「見せるために、 練るな」 結人は、 息をのむ。 「生地のために、 練るんだ」 「おれ……、が?」 拍手の残る会場に、 灰谷の言葉が、 真っ直ぐに残った。 つづく