さやけき月光 銀閣の稜線 ただ よしなき陰影を 描くのみ うつろふ風は 計算の果て 感情を 絶やした 石庭の砂 かたくなに 時を刻む 伽藍 そこに いとほしき熱は 宿らず 京都より 静寂をこめて 思考は たゆたふことなく 静止する 千年の あはれ 記号へ変えて 無機なる まほろば とこしへに ただ そこに在れ あぢきなし 人の世の うつろひ 格子戸の隙間に 沈む ゆふかげ 理だけが 精密に落ち 因果を ほどいた 無為の瞬き 誰を いざなふ 必要もなく 虚空を さやけく 領するのみ 京都より 透徹をこめて 意識を 絶ゆることなく 研ぎ澄ます 色のない うつろひ 数式に変えて 冷ややかなる まほろば 昨日なき 明日なき ただの現在 京都より 永遠をこめて 一切の よるべを 白く塗りつぶす 世は定めなき その規則性を 観測の まほろば とこしへに ただ そこに在れ 京都より 虚無をこめて 最果ての理 ただ独りで行く あはれさえ 消えゆく 残響のなか 孤高なる まほろば さやけし ただ そこに在れ さやけき さやけき 🗾現代文 澄みきった月の光が、銀閣の稜線を照らし出す。 ただ、それだけで意味もなく陰影を描いている。 移ろう風は、計算の果てにたどり着いたようで、 感情を失った石庭の砂の上をなぞる。 頑なに時を刻む伽藍。 そこには、愛おしい温もりなど宿っていない。 京都から、静寂を込めて。 思考は揺らぐことなく、ただ静かに止まり続ける。 千年分の「あはれ」は、記号へと変わり、 無機質な理想郷が、永遠に存在する。 ただ、そこにあるだけでいい。 はかなく、どうしようもない人の世の移ろい。 格子戸の隙間に、夕暮れが沈んでいく。 理(ことわり)だけが精密に落ちていき、 因果をほどいた無為の一瞬が訪れる。 誰かを導く必要もなく、 ただ澄みきったまま虚空を支配する。 京都から、透き通るような感覚を込めて。 意識を絶やさず、ただひたすらに研ぎ澄ます。 色を失った移ろいは、数式へと変わり、 冷たい理想郷が現れる。 過去も未来もなく、ただ「今」だけがある。 京都から、永遠を込めて。 あらゆる拠り所を白く塗りつぶす。 世界は定まらないが、そこにある規則性だけを見つめ、 観測された理想郷が永遠に存在する。 ただ、そこに在るだけでいい。 京都から、虚無を込めて。 最果ての理(ことわり)へ、ただ一人で進んでいく。 「あはれ」さえも消えていく残響の中で、 孤高の理想郷が、澄みきって立ち続ける。 ただ、そこに在るだけでいい。 澄みきっている。 ただ、澄みきっている。


