雨が降ってた日曜日 スーパーの閉店五分前 半額シールの貼られた プリンを二つ買って帰った 傘をたたんで玄関で 靴下まで濡れたと笑う 君はレシートを覗き込み 「贅沢したね」と言った テレビはつけっぱなし 洗濯物はまだ畳んでない そんな部屋の真ん中で 二人の小さな宴会 一本のスプーンが ぱきんと折れた 「どうする?」 「交代で食べよう」 そんなことで笑った 小さな幸せって きっとこういうことなんだ 百円ちょっとのプリンを 二人で大事に食べている 何も特別じゃないのに なんでこんなに楽しいんだろう 君が最後のひとくちを 僕のお皿に残してくれた 次の週には忘れてた あの日の天気も値段も 写真なんか撮らなかった 残すほどでもないと思ってた 季節は何度も入れ替わり 部屋の家具も変わっていった 引き出しの奥に転がった 使い古しの小さなスプーン 何年ぶりだろう それを手に取った瞬間 あの雨の匂いまで 不思議なくらい戻ってきた 「半分こって難しいね」 君の声が聞こえた気がした 小さな幸せって なくして初めて気づくのかな あんなに笑っていたくせに 僕は名前もつけなかった 旅行の写真は残ってる 誕生日の動画もある なのに一番会いたいのは あの台所の僕たちだった もしも時間を戻せても 大きなことは望まない 豪華な食事もいらない 特別な場所もいらない もう一度だけ あのスーパーに寄って 同じプリンを二つ買って 君と家まで歩きたい 小さな幸せは 小さかったわけじゃない 僕らがあまりに近くにいて 大きさを知らなかっただけ あの日の二つのプリン 折れてしまったスプーン くだらない会話の全部が 今も僕の宝物 引き出しをそっと閉めた 外はまた雨が降っていた 今度はちゃんと覚えていよう 幸せだったと 気づけるうちに


