
本棚の本が入れ替わったような気がしてならない。 書斎にある大きな木製の本棚。 そのガラスの引き戸の奥に本がある。 本は大きさもジャンルも様々。 並び方も整然と雑然の中間ほど。 これら本の配置が変わった気配がする。 どの本がどの位置へ、とは指摘できない。 けれども、なんとなく違和感を感じる。 独身の一人暮らしである。 また、滅多に訪問者はいない。 他人が動かしたとは考えにくい。 ならば、犯人は自分か。 そこそこ高齢ではある。 物忘れがあっても不思議ではない。 だが、納得できない。 まったく見覚えのない本まであるのだ。 その一冊を引き出し、ページをめくる。 年甲斐もなく顔を赤らめてしまった。 こんな過激な写真集、まったく記憶にない。 少ないが、文庫本もある。 お気に入りの推理作家の未読の小説を見つけた。 この作家は生涯に四冊しか作品を書かず その四冊とも確かに読んだはずなのに。 驚いたことに、私の伝記まで見つけた。 著者名に記憶はない。 なかなか立派な装丁である。 よくも調べたものだ。 ほとんど内容は合っている。 ただし、没年はとうに過ぎていた。

