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客は七人

STUDIO

開演五分前 幕の隙間 ちょっと覗いて すぐ閉じた もう一回だけ 数えてみる 一 二 三 四 五 六 七 「増えた?」 「いや、増えてない」 「後ろの二人は?」 「対バンだろ」 スタッフ入れたら九人だけど それはさすがに数えちゃダメだ アンプのつまみを少し上げて まあ いつも通りやろうぜ 照明が落ちる 足元を見る 空いてる床が やけに広い でも スティック鳴ったら もう関係ない 客は七人 だからなんだ 七人全部に鳴らしてやる 客は七人 それでも七人 今日ここまで来てくれたんだ 百人分とか 言わなくていい 七人分を全力でやる この狭い箱の この七人に 俺らの今日をぶつけてやる 一番前で首振るひと 後ろで腕組み聴いてるひと 端っこのほうで目を閉じるひと 曲が終わるたび手を叩くひと さっきまで気になっていた 空いてる床が消えていく いや 埋まったわけじゃないけど もう見てる暇がなくなった ギターの弦が汗で滑る ベースは今日も走り気味 ドラムが笑ってこっちを見る もっと行けって顔してる 七人しか いないんじゃなくて 七人も いるんだろ だったら 客は七人 だからなんだ 七人全部に鳴らしてやる 客は七人 それでも七人 最後までここにいるんだ 売れてないとか 知られてないとか 今はどうでもよくなった この狭い箱の この七人が 今夜の全部でいいじゃないか 一人目 二人目 三人目 四人目 五人目 六人目 ……七人目 ありがとな 客は七人 だからやるんだ 七人全部に残してやる 客は七人 忘れないよ 今日ここにいた顔くらい いつかこの箱 埋まったとしても 今夜をなかったことにしない この狭い箱で 鳴らした音は 七人ちゃんと聴いていた 客は七人 俺らは三人 それで今夜は 十人だ ©️ytsgax