
[Intro - morning kitchen ambience, refrigerator hum, distant traffic, lo-fi narration cuts in] (refrigerator humming, coffee dripping) こちらは アーカイブ・オブ・ナッシング。 記録 ナンバー AON-DCC-001。 これは、2002年、ある男性が、 自分が三週間前に死んでいたことに気づきながらも、 それを気にせず会社に通っていた、その記録です。 この記録は、彼の使っていた Digital Compact Cassetteに、 偶然残されていました。 彼が今もどこかで定期券を使っているかは、 記録されていません。 (narration ends, kitchen ambience continues into verse 1) [Verse 1] 朝食のスプーンが量子もつれ起こして 噛んだトーストから聞こえる母の遺言 階段の3段目だけが別の次元に通じてて 猫が見つめる壁の向こうで誰かが溶けてる コンビニの自動ドアが俺を認識しない レシートの数字が勝手に俺の寿命を計算 冷蔵庫開けたら去年の俺が冷凍されてて 解凍ボタン押したら記憶が逆流した [Pre-Chorus] 歯磨き粉の味が 急に祖父の葬式を思い出させて 鏡の中の俺が先に歯を磨き終えてる [Chorus] 普通に生きてるつもりが どうやら俺は三週間前に死んでたらしい でも定期券はまだ使えるから 明日も会社に行くんだろうな [Verse 2] エレベーターのボタンが全部「B」になってて 地下何階まで降りても空が見える 同僚の田中さんが急に透明になり始めて でも誰も気づかないふりをしてる 昼休みに食べた弁当が俺を食べ返してきて 胃袋の中で小さな文明が栄えては滅びる 帰りの電車で隣に座った女子高生が 俺の未来を全部ネタバレしやがった [Bridge - 囁くように] 実は最初から みんな気づいてたんだ 火曜日と木曜日の俺が 別人だってこと [Final Chorus] 普通に狂ってるのか 狂ったように普通なのか もう区別なんてつかないけど 明日も定時に目覚ましが鳴る [Outro] 冷蔵庫の扉を閉めたら また一人 俺が増えた (refrigerator door closing sound, hum continues) (narration returns over refrigerator hum) 記録は、ここで終わっていません。 彼の冷蔵庫には、今も、誰かが増え続けています。 あなたの冷蔵庫の中も、 確認したほうがいいかもしれません。 (refrigerator hum fades, transmission ends with cassette stop sound)


