
永禄の夜、雨が檜の梁を叩く。 畳の目は冷たく、刃は息を潜める。 「来る」—障子の向こう、気配が拍を踏む。 前夜の墨痕、命令は未然、城下はざわめく。 三好の影が伸び、松永の策が笑う。 畳一面、突き立つ刀—選ぶは一つ、迷いは零。 礼して抜く、礼して斬る、礼に還る。 拍で数える足音—いち、に、さん、襖が裂ける。 刃文が光り、火花が散っても名は歌わない。 折れれば畳へ、柄から手を離し、次の柄へ。 「ここを戦場に変える」—胸の間合いは狭まらない。 畳が軍器に変わる、埃が蛍の群れになる。 伝わるところでは、やがて天下五剣と呼ばれる名も混じったという。 だが今はただ、型と拍で世界を切り分けるだけ。 Switch the steel, keep the code—steady lungs, steady will. 刃が鈍れば次の刃、心は鈍らない。 Strike in time, live in time—一六〇の鼓動で夜を割る。 床下の雷、我が拍で鳴らす。 襲来は途切れず、廊下は潮のように満ち引きする。 I read the floor like scripture—tatami lines, hidden angles. 刀は道具、意志は刃。鋼が欠けても拍は欠けない。 柱の陰に息が潜み、影の槍が跳ね返る。 術は呼吸、法は間合い。言葉を畳目に沿って断裁。 名を呼べば重くなる、呼ばねば軽い。今は軽く速く。 「折れても終わらぬ」—畳へ刺し、次の星を抜く。 公家日記の余白に、短い線が走る。 「ある夜、将軍、畳に刀を立てて迎撃す—」 墨は乾く前に滲み、頁は閉ざされる。 名の列は風に消え、ただ拍だけが残る。 規矩は胸に、構えは骨に、刃は手の内に。 箏が泣く。梁に宿る祖霊が息を合わせる。 「型は心、心は間」—月光が鞘になり、静謐が刃になる。 Yo—shi—te—ru—声が刃文のように揺れる。 静けさは罠、次の拍で襲いかかる。 I hold the room by tempo—no retreat, only form. 障子に火—いや、火は心の内。 押し寄せる足軽、重なる気配—数えるより早く斬る。 「遅刻は策」—間延びも呼吸の戦法。 刃が欠け、柄が滑り、畳が赤くはならない—名は伏せる。 踏み替え、体は水、意志は石、拍は鎖。 英語の閃きで敵を裂き、日本語の余韻で場を締める。 Switch the steel, stance resets—oath in the lungs, oath on the tongue. 刃が鈍れば次の刃、武の律は濁らない。 Strike in time, live in time—dawn at the end of the bar count. 畳が花のように刃を咲かせ、東雲が縁を染める。 Switch the steel, keep the code—one listen, you recall the road. 胸に鳴る一六〇、最後の一撃へ。 畳に眠る刃、名は風へ渡る。 When the blade broke, the will did not—拍だけが史になる。


