むこうから 髪の長い 女が近づいてくる ロングコート白いマスク まるで口裂け女だな 都市伝説が脳裏をよぎり バカバカしさに苦笑する 徐々に距離が縮まり やがてすれ違う直前 「ねえ、わたし綺麗?」 一瞬で背筋が凍る そんな馬鹿なと思いつつも 冷や汗が止まらない ヤバい 撃退法 何だったっけ 「ねえ、わたし綺麗?」 迫る声に 思考が止まる 覗き込まれ 肌が粟立つ 「キレイ」と絞り出す僕に 血走った目で マスクを外す 「これでも?」 それはそれは悍ましい顔 耳まで裂けた大きな口 ベッタリ塗った赤い口紅 堪えきれずに悲鳴をあげる 走り出した僕は知っている 決して逃げ切れないことを ホラ 鎌を持った彼女に あっという間に追いつかれた ヤバいヤバいヤバい 咄嗟に 思い出した言葉を叫ぶ ポマードポマードポマード 怯んだ隙に僕は逃げた あれから僕は夜が怖い 誰かとすれ違うたびに ポケットのベッコウ飴を 震える指で握り締める 僕はすでに気づいている 飴を忘れたその日が最後 彼女はすかさず現れて 僕に静かに問いかける 「ねえ、わたし綺麗?」