
――むかしむかし、紀伊の国の太田に、 海を渡ってきた人がおりました。 名を、呉村主といいました。 一握りの苗を胸に抱き、 黄金色に輝く国を夢みて、大地を耕しました―― 紀伊の国 太田の 潮の香に 舟を寄せたる 渡り人 一握りの苗を 胸に抱き 黄金色の恵みを 夢に見る ああ 故郷遠く 波の音だけ 聞こえくる 茨木の野辺に 風がわたる 稲の根ざしを 見届けて 雲の向こうに 紀伊の山を想い 涙を ひとしずく ああ 帰りたくても 流るる水は 戻らない 播磨の里に 灯をともす 村の笑顔に 空が晴れ 太田の名を 受けついで 稲の穂揺れる 夕まぐれ ああ 夢を託して 沈む夕陽に 手を合わせ 国を離れて 幾たびの 川を越え 山を越え お米のすばらしさ 伝えた人 名も知られず 歴史に飲まれ 消ゆ 国を離れて 幾たびの 川を越え 山を越え お米のすばらしさ 伝えた人 名も知られず 歴史に飲まれ 消ゆ ――太田の名が いくつの地に残ろうと、 そのはじまりは、紀伊の国太田 お米の歴史のひとつの物語――

