
[Intro] (囃子:寄席の三味線と太鼓の音がにぎやかに響く) 「えー、お忙しい中ようこそおいでいただきました。 落語には、よく泥棒や長屋の熊さん八っさんが出てまいりますが、 今日のお話に登場いたしますのは、なんと『鳩』でございます」 [Verse 1] 八五郎が上野の山を歩いておりますと 目の前に一羽の鳩が歩いている。 首を前後にフリ、フリ、フリ。 「おい、そこのお前。随分と忙しく首を振ってるな。 何かいいことでもあったのかい?」 すると鳩が振り返り、ハスキーな声で言った。 「忙しいのは首じゃねえ、世間さ。 クルックー、クルックー、豆はおくれよ、話は聞くぜ」 [Chorus] クルックー、クルックー、上野の鳩は 人間並みに世渡りが上手い 「おい八っさん、俺たちの世界も楽じゃない。 平和のシンボルなんて、おだてられちゃあ 毎日ポーズをとるのも一苦労よ」 (三味線のユーモラスな手拍子) [Verse 2] 「へえ、鳩も苦労してるんだな」と八五郎。 「当たり前よ。お前ら人間はいいよな、 恋バナだの仕事の愚痴だの、言葉があるから。 俺たちなんて、何を聞かれても『クルックー』。 『今日の晩飯、何にする?』『クルックー』、 『お前の母ちゃんデベソ!』『クルックー』。 これじゃ、感情表現が追いつかねえ!」 [Bridge] 「じゃあ、お前、本当は何て言いたいんだ?」 八五郎が尋ねると、鳩は胸を張って、 「そりゃお前、本当は『それな!』とか 『マジ卍!』とか、言いたいことは山ほどある。 でもな、言っちまうと平和のシンボルから降ろされる。 営業妨害ってやつよ。 だから今日も、腹が立っても、 スマイル決めて、クルックー!」 [Chorus] クルックー、クルックー、上野の鳩は 愛嬌ふりまき、豆を食う 「おい八っさん、世間を渡るにゃ 愛想笑いと、首のフリが肝心よ」 (小気味よい落語のオチのテンポ) [Outro] 「なるほど、鳩の世界も世渡り上手が生き残るってわけだ」 「そうさ。人間も鳩も、 結局は『コメ(米・コメディ)』がなきゃ食っていけねえからな」 「おあとがよろしいようで!」 (ドンドントトド、と寄席の太鼓が鳴り響いて終幕)

