
月曜だけ知らない人です #リリックガチャ
記憶喪失のふりをして 月曜日から逃げる 目覚まし時計に 誰ですかと聞く 鳴り続ける音の 意味がわからない 私は今日から 初対面です カレンダーには 見覚えのない 黒い予定が 並んでいる 会議という字が こちらを見るけど 読み方ごと 忘れたことにする 月曜日さんは 玄関先で 書類の束を 抱えて立ってる お待ちしてましたと 笑う声に 私は名字も なくした顔をする 通勤バッグが 焦りはじめて 財布と鍵を 口に詰め込む 行き先を聞けば 黙り込むから たぶん共犯に なりたくないのだ 記憶喪失のふりをして 月曜日から逃げる 昨日までの私を 証人にしない やるべきことも 返すメールも 全部どこかの 他人の荷物 駅へ向かえば 負けな気がして 反対方向の 道を曲がった パン屋の匂いが 身元確認を やさしく拒否して くれた気がした 会社からの通知が 震えている 誰宛てですかと 画面に問う あなた宛てですと 光る文字から 急に現実の 足音がする 月曜日さんは しつこかった 信号待ちにも ついてきた 忘れたふりでは 逃げ切れないと 青い光まで 説教をする 喫茶店のすみで 水を飲みながら 私は自分の 履歴を消す 趣味も特技も 前職もなくて ただ眠いだけの 生き物になる でも鞄の底で 手帳が開き 私の字だけが 裏切っていた やらなきゃいけない 小さな項目が 逃亡先まで 追いかけてくる 記憶喪失のふりをして 月曜日から逃げる 忘れたかったのは 日付じゃなくて 毎週ちゃんと 戻ってくるものに 毎週少し 削られること 昼過ぎになると 演技も疲れ 自分の名前が 少し戻った 逃げたところで 火曜日の影が もう角の向こうに 立っていた それでも今日は 知らない人として 空を見上げる 時間を盗んだ 雲の形に 締切はなく 風は出勤簿を 持っていない 夕方、月曜日さんが 隣に座る 怒るでもなく 缶コーヒーを開ける お前も大変だなと 言われた気がして 少しだけ記憶が 戻ってしまう 記憶喪失のふりをして 月曜日から逃げた 完全には 逃げ切れなかった けれど一日分の 私だけは 誰にも提出 しないで済んだ 夜の部屋で 手帳を閉じる 明日の予定が 薄く光る 私は名前を 思い出しながら 月曜だけは まだ知らないふりをした

