
「盲目の天才三味線弾き」 ✖ 「堕ちていくピアニスト」 それは、男が理解し得ぬところで 彼女が抱えていた葛藤に 気付けなかった後悔 恋をし、確かに愛し合った二人 けれど「絶音」にとっての幸せは ただ一つ 舞台の上で 自分の音を鳴らし続けること 理解できなかった いや、理解しようとしなかった そもそも 理解が許される領域じゃなかった 絶音… キミのその 音に忠実すぎる愛に 僕は 第24話「残存×共鳴」 ____________________ 観客なし アンコールなし 一発勝負の「再演」が静かに始まる ※以下読みたい人だけ向けです(ほぼ余白無しです) ____________________ story: Side A 「ピアニスト」 その昔、ピアノに対して強いトラウマを持つ とある男性がいた 虚ろな目をしたまま、いきつけの酒場の帰り道 あてもなく立ち尽くしたその先に 忘れようとしたはずの"懐かしい音"を聴く 引き返そうとしたが、気付くとその覚束ない足は 降りしきる雨の中 "あの場所"へと歩みを進めていた ここは廃業したはずの 小さなコンサートホール いつもの幻聴のソレとは違い やけに歪みのない正しい音 「まさか…」 激しい想いに駆られた男は "立ち入り禁止"の板を蹴破り あの頃から時が止まっている 煤けたホールへと足を踏み入れた おかしい 音は何処から ボロボロに破れた障子と 崩れかけた壁を眺めながら 男は少しずつ正気を取り戻していく 一枚の座布団が敷かれたステージ上 赤黒く染まる三味線と、床には飛び散った鉄の色 その奥には 時を止めたスタインウェイが“待っていた” まるで呼ばれるようにして男は 上着を脱ぎ捨てて 袖を捲る ____________________ story: Side B 「正しい音」 その昔、絶音の異名を持つ盲目の女性がいた 彼女の奏でる旋律は 多くの者の心を揺さぶる 卓越した技術に目をつけた とある小劇場のオーナー 連日、大盛況のホール あまりの観客の期待と 見え隠れする金の匂い まるで"商業"を奏でる自分の音に 嫌気が差していたその頃 たまたま劇場に来ていた 流れのピアニストと出逢う 彼もまた、各地でその 独自の音を評価されてきた男だった 文化が違えど 意気投合した二人は 公演終わりに毎晩、劇場に忍び込み 普段は交わることのない"即興の音"を楽しむ 互いの"音"が通じ合う中 やがて二人は恋に落ちていく 公演最終日、演目の終わり 音が急に止まった 突如としてざわめくホール 客席手前から悲鳴が聞こえた 口元から流れるその血は 彼女を赤く染めていく 鍵盤から手を離し駆け寄る男 舌を噛み切った彼女は 正座のままで 美しく正しい形を保って すでに、絶命していた ____________________ story: 「再会」 男は、彼女のその心に寄り添えなかった 不甲斐なさと絶望を抱えたまま 3年が経とうとしていた もう一度"トラウマ"の前に立つ男は 彼女の整った音に耳を傾けた あの日からの 積み重なった埃を払うように "どこか"から流れる音に合わせ 調律の合っていない鍵盤の正しさを 探るように鳴らしていく 酒臭い手は震え、壊れた音色だけが さらに男の過去を抉っていく 手が止まる 「もういい…」 まるで待っていたかのように 三味線の音が消え、しばしの静寂が訪れる 僕は…君を理解していたつもりだった… 男の葛藤は、そのトラウマの前で繰り返される その時 突如として激しく魂を掻き鳴らすような あの音が鳴った 一切の迷いを断ち切るような 美しく正しい音色 「絶音…キミはまだ…」 男の指は、自然とあの頃を思い出すようにして 気付けば、徐々に呼吸が合っていく そして 時間軸がズレた世界で再会した二人の 一夜限りの再演が始まる 第24話 「残存×共鳴」 ____________________ この設定を踏まえて ピアノ側の音を崩壊寸前→整っていく にしたかったのだが ボーカル無しだとどうしても崩れてくれず えーーー。もういいや(´・ω:;.:... となり、公開の運びとなるのであった。 完 [Instrumental]

