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1センチって誰が決めた

V6

【GIRL|young, soft, friendly, playful, close to mic】 こんばんは。 今日も一日、おつかれさまでした。 あなたの脳を、 ちょっとだけ賢くしてから…… ちゃんと、 おやすみ前の時間にお返しします。 私、話すの好きなんですけど。 夜ひとりで喋ってると、 「あれ? 私いま何の話してた?」 ってなるんですよ。 【GUEST|calm, slightly amused】 危ないですね。 【GIRL】 そうなの。 トークのゲシュタルト崩壊。 【GUEST】 あんまり聞かない言葉ですけど。 【GIRL】 私も今つくった。 【PAUSE|small laugh】 ということで今日は、 見失った私を回収してくれる人を 呼びました。 こんばんは。 【GUEST】 こんばんは。 よろしくお願いします。 【GIRL】 今日は足元の悪い中、 ありがとうございます。 【GUEST】 本当に悪かったですね。 【GIRL】 ね。 今朝、せきせつ3センチだったの。 ……3センチ。 【GUEST】 はい。 【GIRL】 ねえ。 3センチって、何? 【GUEST】 急ですね。 【GIRL】 いや、だって。 普通に言うじゃん。 「雪3センチ積もりました」 「あと1センチ切ってください」 「身長1メートル何センチです」 ……誰が決めたの? 【GUEST】 そこですか。 【GIRL】 そこです。 夜って、 考えなくていいことほど 気になるじゃん。 で、調べたの。 そしたら昔のものさし、 めちゃくちゃ自由だった。 王様の足とか。 【GUEST】 身体を基準にした単位ですね。 【GIRL】 そう。 足とか腕とか。 ……待って。 王様、足でかかったらどうすんの? 【GUEST】 基準ですからね。 【GIRL】 王様が変わったら? 【GUEST】 困りますね。 【GIRL】 でしょ? 世界のサイズ、 王様に左右されたくないじゃん。 【GUEST】 まあ、それはそうですね。 【GIRL】 それで18世紀のフランスで、 「もう人間の身体やめよう」 ってなる。 誰の足でもない。 誰の腕でもない。 みんなが納得できるもの。 で、何を選んだと思う? 【GUEST】 知ってますけど。 【GIRL】 知ってても驚いて。 【GUEST】 ……何を選んだんですか? 【GIRL|slightly dramatic】 地球。 【GUEST】 でかい。 【GIRL】 でしょ。 いきなりスケールどうした、って。 北極から赤道まで、 地球の子午線に沿って測って、 その1000万分の1を 1メートルにしよう、って。 【GUEST】 かなり壮大です。 【GIRL】 だからさ。 私たちが定規で見てる、 この1センチ。 元をたどると…… 地球のお裾分けなの。 【GUEST】 そう考えると、 ちょっと見え方が変わりますね。 【GIRL】 ね。 急に1センチが尊い。 でもさ。 【PAUSE】 地球って…… 動くよね? 【GUEST】 動きます。 【GIRL】 完全な球でもないよね? 【GUEST】 少し潰れています。 【GIRL】 揺れるよね? 【GUEST】 揺れますね。 【GIRL】 ……基準に向いてなくない? 【GUEST】 そこに気づきましたか。 【GIRL】 遅かった、人類。 【PAUSE|small laugh】 それで、 「じゃあもう、 動かない1メートルを作ろう」 ってなって。 【GUEST】 金属製のメートル原器ですね。 【GIRL】 そう。 棒を作った。 「はい! 今日からこれが1メートル!」 もう絶対動かない。 ……と思うじゃん。 【GUEST】 思いますね。 【GIRL】 金属、伸びる。 【GUEST】 温度などで、 わずかに変化します。 【GIRL】 もう! 世界、 全然言うこと聞いてくれない。 地球もダメ。 棒もダメ。 じゃあ何なら変わらないの? って探して、 人類が次に行ったのが…… 光。 【GUEST】 現在のメートルは、 真空中の光の速さを使って 定義されています。 【GIRL】 光が、 1秒の 2億9979万2458分の1の時間に 進む距離。 それが1メートル。 【PAUSE】 ……ん? 【GUEST】 どうしました? 【GIRL】 1秒って、何? 【GUEST】 そこに行きますか。 【GIRL】 行くでしょ! 長さ決めたかっただけなのに、 今度、 時間の定義が必要になった。 世界、 逃がしてくれない。 【GUEST】 現在の1秒は、 セシウム133という原子の 特定の遷移に対応する周波数を 基準にしています。 【GIRL】 ……待って待って。 雪3センチから始まったよね、 今日。 【GUEST】 始まりましたね。 【GIRL】 王様の足に行って。 地球に行って。 金属の棒に行って。 光に行って。 いま…… 原子? 【GUEST】 原子です。 【GIRL|quietly】 遠くまで来たねえ。 【PAUSE|soft】 でも、そう考えると。 私たちの1センチの根っこには、 原子の、 量子のリズムがある。 【GUEST】 突き詰めれば、 そこにつながっています。 【GIRL】 なんかさ。 たった1センチを ちゃんと決めたかっただけなのに。 人類、 めちゃくちゃ頑張ってない? 【GUEST】 かなり長い旅ですね。 【GIRL】 地球を測って。 棒を作って。 光を追いかけて。 原子まで行った。 だって世界って、 止まってくれないから。 地球も動く。 ものも変わる。 私たちも変わる。 だから人間は、 揺れない世界を見つけたんじゃなくて。 揺れる世界の中に、 「ここを基準にしよう」 っていう約束を 作り続けてきたのかもしれない。 【PAUSE】 1センチって。 人類が世界を信じるための、 小さな約束なのかも。 【GUEST】 ……今日は、 きれいに着地しましたね。 【GIRL】 したよね? 【GUEST】 雪3センチから。 【GIRL】 そう! 雪3センチから量子まで来た。 夜って怖い。 【GUEST】 もう寝たほうがいいですね。 【GIRL|laughing softly】 はい。 じゃあ今日は、 このへんで。 明日、定規を見たら、 その1センチの向こうに、 地球と、 光と、 原子と、 どうにか世界を測ろうとしてきた 人類のことを、 ちょっとだけ思い出してみてください。 それでは。 おやすみなさい。 【GUEST】 おやすみなさい。