
やわらかな風が 頬を撫でる 小さな影が 道端に揺れる まだ世界は 少しだけ冷たくて だけど誰かの手が そっと温めてくれた 七五三の笑顔の裏で ほんとうは 泣き虫だった 遠足の帰り道 置いていかれた気がして 夕暮れの色が 胸を締めつけた 擦りむいた膝がしみる帰り道 しゃがみ込んだ僕のそばに 優しい声が落ちた 「痛かったね、大丈夫だから」 その手の温度が 涙を溶かしていく 何も言えない僕を ただ抱きしめてくれた 春風の中で 初めて知った 痛みの向こうに 優しさがあることを 泣きながらでも進めるように 背中を押してくれた人がいた あの手のぬくもりが 僕を強くしてくれた ――優しさは 痛みから芽を出すんだ ランドセルが重く感じた日 誰にも言えなかった悔しさ 幼い心は すぐに傷つくくせに どうしてか、助けを呼べなかった そんな僕の沈黙に 気づいてくれる人がいた 夕飯の湯気越しに聞こえた声 「無理しなくていいよ、あなたのままでいい」 その一言が 胸の奥で光になった 優しさはいつも 痛みのそばに座っていた 春風が揺らす 桜の下で 僕は少しだけ うまく笑えた 泣きたい日も 逃げたい夜も あなたの言葉が いつも支えてくれた あの時の涙が 今の僕を作っている ――優しさは 誰かがくれた光なんだ あの日の膝の傷跡は もう見えなくなったけど 心の奥にはまだ しがみつくような痛みがある だけど、それすら抱きしめられる だってあなたが教えてくれた 「弱さは恥じゃない」 その言葉が 大人になった今も 僕を支えている 春風の中で もう一度思う 僕が優しくなれた理由は あの日の涙を あなたが拭ってくれたから 痛みと優しさは いつも隣にいて 僕を強くしてくれた あなたの手がくれた光は 今も胸の奥で揺れている ――優しさは、心の春 あなたがくれた、いちばん最初の季節 風が運んできた春の匂い その中に確かにある あなたが残してくれた 優しさの記憶

