午前零時 街から音が消える 信号は青いまま 時計の針だけが 逆向きに回り始める 誰も知らない路地裏で 名前のない花が咲く その花を見つけたら 決して触れてはいけない そう言われていた なのに僕は もう何度も触れている --- 【Verse 1】 古い洋館の窓から 誰かが僕を見ている カーテンの隙間 白い指が三本 四本目は どうしても見えない 扉には鍵がない なのに開かない 壁に掛けられた肖像画 知らないはずの顔なのに なぜだろう 涙が出た その人の名前を 僕は知っている気がする でも思い出そうとすると 頭の奥で鐘が鳴る ひとつ ふたつ みっつ そして四つ目の鐘だけ 誰かが 泣いている --- 【Pre-Chorus】 地下へ続く階段 十三段あるはずなのに 降りるたび 十二 十一 十…… 数が減っていく 最後の一段を踏んだとき 後ろから声がした 「戻らないで」 振り返ると 僕が立っていた --- 【Chorus】 誰もいない部屋で 誰かが僕を呼んでいる 知らない声なのに なぜか懐かしくて 月の裏側に隠された 僕だけの秘密 忘れたはずの記憶が 夜になると目を覚ます 「あなたは誰?」 そう尋ねたら 鏡の中の僕が 先に泣いた --- 【Verse 2】 古いテーブルの上に 白い封筒がひとつ 宛名は僕 差出人は空白 封を切ると 一枚の写真 そこには五人 笑っている僕 知らない少女 黒い服の男 顔のない人 そして 誰も写っていない椅子 写真の裏には 「四人で撮りました」 と書かれていた 僕は何度も数えた 一人 二人 三人 四人…… やっぱり 五人いる --- 【Verse 3】 窓の外には 昨日と同じ雨 でも時計を見ると 今日は 七月三十二日 カレンダーには そんな日はない 赤いペンで書かれた文字 「忘れないで」 その下に 僕の筆跡で 「忘れて」 と書かれていた どちらが先に書いたのか もう分からない --- 【Pre-Chorus 2】 夜になると 電話が鳴る 受話器を取っても 何も聞こえない ただ遠くで 水の中から話しているような声 「まだ……そこにいるの?」 僕は答える 「いるよ」 すると電話の向こうから 小さく笑う声 「よかった」 その瞬間 僕の背後で 受話器が鳴った --- 【Chorus 2】 誰もいない廊下で 足音だけが増えてゆく ひとつ ふたつ みっつ 数えるたびに 僕の影がひとつ増える 月明かりに濡れた階段 そこに誰かが座っている 顔は見えない でも僕には分かる あれはきっと 僕がずっと探していた人 なのに 名前だけが どうしても思い出せない --- 【Bridge】 午前三時十三分 すべての鏡を 布で覆った これで大丈夫 そう思った なのに 布の向こうから コン コン コン と音がする 「誰?」 返事はない もう一度 コン コン コン 僕が三回叩くと 向こうからも 三回 返ってきた そして 四回目 僕が叩いていないのに 鏡の中から 四回 --- 【Dark Verse】 布を剥がす 鏡の中には 僕がいない 代わりに あの少女が立っている 濡れた髪 白い肌 伏せた目 そして手には あの写真 少女が写真を裏返す そこには 新しい文字があった 「やっと思い出した?」 僕は首を振る 思い出せない 思い出したくない なのに 頬を涙が伝っていた 少女が微笑む 「じゃあ、どうして泣いてるの?」 --- 【Final Chorus】 名前のない夜に 僕は誰かを待っている 愛していたのか 愛されていたのか もう何も分からない 月のない空の下 黒い花だけが揺れている その花びらが落ちるたび 誰かの記憶が消えてゆく ひとつ ふたつ みっつ…… 僕は必死に 君の名前を探す でも 思い出せない 思い出せないのに 胸だけが痛い --- 【Last Verse】 朝が来る 街は何事もなかったように動き始める 信号が変わる 人が歩く 鳥が鳴く 昨日までの世界 だけど僕の部屋には 知らない花が一輪 机の上には 見覚えのない鍵 そして鏡には 昨日までなかった文字 「今夜、続きを話そう」 僕は鍵を握る どこへ行く鍵なのか 分からない ただ ポケットの中で 誰かの手が 僕の手を握り返した --- 【Outro】 午前零時 また時計が逆に回る 街から音が消える そして 誰もいないはずの部屋で 僕ではない声が 静かに歌い始める 「忘れないで」 「忘れて」 「忘れないで」 「忘れて」 二つの声が重なる 鏡を見る そこには 僕と もうひとり 僕と同じ顔をした誰かがいる その人が笑う そして 僕に向かって 小さく囁いた 「次は、君が消える番だよ」


