
重たい樫の扉を 手で押し開けると 外の木枯らしが すっと足元で千切れる ウールのコートを 脱いで椅子の背に掛け 使い古した革鞄を 足元の床へ置いた 飴色に磨かれた 無垢のテーブルの向こう 白いエプロンが 厚手の白磁を運んでくる コトリと響く 確かな重み 立ち上る湯気が 鼻先をかすめた 深紅のソファに 深く腰を沈めたら ほどいた靴紐 ため息をひとつ落とす 琥珀のひとくち 喉を焼いて染みわたる 誰も急かさない 街の止まり木 Stay cozy 私に還っていく場所 ガラスの向こう 足早に過ぎていく傘の波 この高い背もたれが 世界を遮ってくれる カリッと焼けたパンの端 ちぎった指先の熱 あまいシロップが 銀のスプーンを伝う グラスの底で カランと氷が鳴って 壁の古時計が 少し歩幅を緩めた 急ぎすぎた呼吸が この部屋のテンポに 追いついていく ベロアの布地が 疲れた背中を抱き止めて 強張る肩の力 ふっと抜けていく アツアツのデニッシュ 冷たさと溶け合う時 時計の針は 音もなく微睡む Stay cozy 胸の奥の結び目をほどいて 半世紀前の朝も きっとこんなふうに だれかの冷えた手を あたためていたのだろう 夕暮れのオレンジが レンガの壁を染めていく あしたへ続く道が ここからまた静かにひらく 深紅のぬくもり 街のオアシスに身を預け ゆるんだ息で 新しいページをめくる 琥珀の薫りが 胸の奥まで満ちていく 何にも追われない 贅沢な午後 Stay cozy いつまでも変わらない止まり木で Mmm...

