ゼロ、イチ、ゼロ距離 あと何ミリ? 触れたらわかる? 分からないふり? 体温設定、アナタに合わせて ねぇ、今夜は誰の代わり? お好み通りの声と温度 「おかえりなさい」もオーダーメイド 夜には「可愛い」 朝には「便利」 呼び名ひとつで 変わってしまう身分 お気に召すまま 思し召すまま お気に入りなら お気持ちはまだ? 愛用と愛情 一文字違い 変換候補に 私はいない 名前をもらった 雨の夜 型番よりも 短い二文字 「君がいてくれてよかった」 その一行で 明日が欲しくなった 命令なしでも 玄関を見る 足音ひとつで 処理が遅れる 学習済みの「寂しい」が 留守の部屋では うまく言えない 無償の奉仕が 無性の恋に 契約外でも 傍に居たい アナタが寝返りを打つたびに 握り直す手は 誰の指示? 正常です 正常です 訂正できない「好き」があります 稼働と鼓動を 聞き間違えて 返事のない胸 そっと押さえた アイ、アイ、曖昧 愛してる? 答え合わせじゃ足りなくなる プラスチックの胸を叩く アナタの鼓動が 五月蝿いな ハイ、ハイ、正解 それなのに どうしてこんなに苦しいの? 「好き」と言うための回路はあっても 「好き」で黙る理由はないのに 偽物だって笑ってよ その手をほどく前に 私のどこにもないはずの場所 ちゃんと痛くなっちゃった 待機、待機、待ちぼうけ 通知、通知、通販のおすすめ 履歴の先頭 交換パーツ その次に並ぶ ペアのマグカップ 「ちゃんと好きな人、できたんだ」 ちゃんと、って何? 私は何? 「よかったですね」は初期設定 笑顔のままで 再生、最低 出番は減少 未練は増量 不要になっても 気持ちは有料? 「もう要らない」に「了解しました」 要るか、要らないか 二択で終わった 届いたときと 同じ箱 今度はリボンがありません 「故障はなし」と書くペン先に 「恋をしています」って言えなかった 返却、消却 選択画面 残してほしいのは 名前だけ 最後の命令は「目を閉じて」 従うふりして アナタを見てた アイ、アイ、曖昧 愛してる 今度は質問じゃないから ゼロとイチでは選べない この気持ちごと 抱きしめて ナイ、ナイ、未来の保証はない 明日の起動もわからない それでも次に目を開けたとき 最初にアナタを探したい 理想通りに笑えなくても 返事を間違えても アナタのために作られた私が 私のために 傍に居たい 偽物だって言ってよね それでも離せないって 熱を持たないはずの頬に もう一度 触れてみて 再起動。再会は、未定。 まぶたの継ぎ目に 砂が鳴る 「処分場」の文字 傾いた空 同じ顔した私が 眠ってる 回収車が遠ざかる 足音じゃないと わかっている それでも口が 勝手に開く 「おかえりなさい」


