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The Song That Came Late

🎬✨特別サイドストーリー 第五幕 『被告L Ⅴ ― 寝落ちにつき詫び曲三部作 ―』 登場人物: 🐾PATO/特別検事 🦙L/被告・前任検事 🦆カモノハシ/裁判長 🎻しでん/証人 🎸K/傍聴人 🥁KYOUYA/弁護人 🎬【導入】 “同時公開の鐘は鳴るはずだった” “けれど前任検事は、睡魔の森で迷子になった” “詫びは石ではなく、音で差し出された” 四度にわたる特別法廷を経て、 法廷には妙な慣れが生まれていた。 裁判長の木槌。 弁護人の立ち位置。 傍聴席のざわめき。 そして、事件が起きるたびに なぜか誰かが被告席へ運ばれてくる流れ。 これまで検事席に立っていたのは、Lだった。 冷静に見えて少し楽しそうに、 被告Kを何度も追及してきた、あのLである。 だが、今回は違った。 今回の事件で、Lは告発する側ではない。 告発される側だった。 【L】 「いつもの席に座れないだけで、こんなに落ち着かないとは……」 傍聴席のKが、妙にしみじみとうなずく。 【K】 「俺も最初そうだったよ」 【KYOUYA】 「経験者の言葉に重みがあるね」 【K】 「……あれ? 今回は俺じゃないの?」 【カモノハシ】 「今回は違います」 【K】 「安心したような、ちょっと寂しいような」 【カモノハシ】 「その感情は、だいぶ法廷に慣れています」 木槌の音が響く。 【カモノハシ】 「これより、特別法廷第五幕を開廷します。  本件は、じゃんぐる村における同時公開予定案件、  ならびに詫び曲三部作発生事件について審理します」 そして今回、検事席に立つのはPATO。 第三の詫び曲を受け取った当事者であり、 Lと日頃から猫キックと猫ビームを交わす、 本件をもっとも近くで見ていた人物である。 【PATO】 「Lちゃ、今日はちゃんと聞こうね」 声はやさしい。 けれど、逃げ道はない。 【L】 「やさしい声なのに、すでに詰んでいる……」 🎬【Scene 1:告発】 PATO特別検事が静かに立ち上がる。 手元には、三つの記録が並んでいた。 【PATO】 「検察側は、被告Lを  “同時公開の鐘を鳴らす前に寝落ちした罪”  “詫びの気持ちを曲に変えすぎた罪”  “村民を笑わせ、困らせ、少し感動させた罪”  以上の容疑で告発します」 【L】 「最後の罪、だいぶ感情が混ざってませんか」 【PATO】 「混ざってます」 【K】 「検事が正直だ」 【KYOUYA】 「でも、今回の争点としてはかなり正確です」 【L】 「弁護人、もう少し守って」 【KYOUYA】 「守るよ。守るけど、寝落ちは寝落ちだからね」 【L】 「そこは否定できない……」 PATO検事は、証拠台へ一歩近づく。 【PATO】 「本件の発端は、じゃんぐる村の小さな音楽企画でした。  同じ時間に、同じ熱量で、みんなの音を鳴らそう。  そんな楽しい計画でした」 法廷の空気が少しだけやわらぐ。 【PATO】 「けれど当日、ひとつの席だけ、まぶたの重力に負けていました」 【L】 「表現がやさしいのに刺さる」 【PATO】 「猫キック案件です」 【L】 「出た……」 🎬【Scene 2:被告の弁明】 【カモノハシ】 「被告、弁明はありますか」 Lは小さく手を上げる。 そして、すぐに弁護席のKYOUYAを見た。 【KYOUYA】 「早い。まだ自分で話すところ」 【L】 「だって、特別検事がやさしい顔で詰めてくるから……」 【PATO】 「詰めてないよ。確認してるだけだよ」 【K】 「その“確認”が一番こわいやつだな」 Lは、こほんと咳払いをした。 【L】 「寝落ちしたのは事実です。  でも、忘れていたわけじゃありません。  楽しみにしてたし、ちゃんと返したかった。  だから、起きてから考えたんです。  遅れたぶん、どうしたら気持ちを返せるかなって」 【PATO】 「それで?」 【L】 「音で返そうと思いました」 【しでん】 「それは、らしいですね」 【L】 「ただ……一曲で済まなくなりました」 【カモノハシ】 「なぜですか」 【L】 「気持ちが増えました」 法廷が静まる。 その答えは言い訳のようで、 不思議と、少しだけ本当のことに聞こえた。 🎬【Scene 3:証拠品三部作】 PATO検事が三つの記録を示す。 【PATO】 「証拠品A。  被告自身に関わる音を、詫びの始まりとして差し出したもの」 【PATO】 「証拠品B。  走り抜けた証人しでんさんへ向けて、  最初の足跡にもう一度光を当てたもの」 【PATO】 「証拠品C。  PATOに向けて、初期の音をもう一度鳴らしたもの」 【L】 「こう並べられると、ちょっと恥ずかしいですね」 【PATO】 「恥ずかしいことは、だいたい大事なことです」 【KYOUYA】 「検察側、今のは被告に有利な発言では?」 【PATO】 「有利でも、ほんとのことなので」 【K】 「この検事、やっぱり優しいな」 【PATO】 「優しいけど、寝落ちは寝落ちです」 【L】 「そこだけは揺るがない……」 その瞬間、PATO検事の足元から、 ぽふっと小さな猫キックのような効果音が鳴る。 【L】 「異議あり。猫ビームで反論します」 被告席から、ぴかっと控えめな光が返る。 【カモノハシ】 「法廷内での猫キックおよび猫ビームは、  演出の範囲内でお願いします」 【K】 「もう許可制なんだ」 🎬【Scene 4:しでんの証言】 【PATO】 「証人しでんさん。  今回の一連の出来事を、どう受け止めましたか」 しでんは少し考えてから答える。 【しでん】 「まず、走り抜けた後に音で祝ってもらえるのは、  やっぱり嬉しいことでした」 Lが少しだけ顔を上げる。 【しでん】 「それに、詫びというより、  “ちゃんと見ていたよ”という音に聞こえました。  遅れたことより、そこに気持ちがあったことの方が残っています」 【L】 「しでんさん……」 【PATO】 「つまり、被害感情は?」 【しでん】 「ありません。  ただし、寝落ち村長としては、  今後アラームを増やした方がいいと思います」 【KYOUYA】 「妥当です」 【K】 「かなり妥当」 【L】 「みんな現実的……」 🎬【Scene 5:弁護】 KYOUYAが静かに立ち上がる。 【KYOUYA】 「裁判長。  たしかに被告は寝落ちしました。  同時に鳴るはずだった鐘を、少し遅らせてしまいました。  そこは弁護側も争いません」 【L】 「争ってほしかった気もする」 【KYOUYA】 「でも、私は知っています。  被告は、ただ遅れた人ではありません。  人を巻き込み、背中を押し、  “こっちで一緒に遊ぼう”と声をかける人です」 法廷の空気が、少し変わる。 【KYOUYA】 「私にとっても、被告はきっかけをくれた人でした。  そのきっかけがあったから、  この村の音や、笑いや、じゃれ合いの中に入ることができた。  だから今回、助けを求められたなら、  私は弁護席に立ちます」 Lは、くねくねしたまま固まった。 【KYOUYA】 「詫び曲三部作は、ただの謝罪ではありません。  相手の過去の音に触れて、  そこへもう一度光を当てる行為です。  それは、遅れたことをごまかすためではなく、  ちゃんと受け取って、ちゃんと返そうとした証拠です」 PATO検事は黙って聞いていた。 【KYOUYA】 「猫キックが飛んで、猫ビームが返る。  外から見れば、少し不思議なやりとりかもしれません。  でも、その奥にあるのは、攻撃ではありません。  これが、この人たちのコミュニケーションなんです」 【K】 「……いい弁護だな」 【KYOUYA】 「だから弁護側は主張します。  本件は、寝落ちによる悪質な遅延事件ではありません。  少し遅れて届いた、  不器用で、にぎやかで、あたたかい祝福です」 🎬【Scene 6:検事の本音】 PATO検事は、ゆっくり息をついた。 【PATO】 「検察側として、寝落ちをなかったことにはできません」 【L】 「はい……」 【PATO】 「でも、詫び曲なんて本当はいらなかった。  楽しかったから。  それだけで、もう十分でした」 Lは何も言わない。 【PATO】 「でも、もらった曲は嬉しかったです。  ちゃんと聴いてくれていたんだなって思いました。  だから私は、厳罰は求めません」 【K】 「やっぱり優しい検事だ」 【PATO】 「ただし、猫キックはします」 【L】 「そこはするんだ」 ぽふっ。 小さな猫キックが、今度はやさしく飛んだ。 Lは反射的に猫ビームを返そうとして、 少し迷ってから、光を小さくした。 【カモノハシ】 「よろしい。十分に情状は見えました」 🎬【Scene 7:判決】 カモノハシ裁判長が木槌を取る。 【カモノハシ】 「判決を言い渡します。  被告L。  寝落ち罪について、有罪」 【L】 「やっぱり……」 【カモノハシ】 「ただし、詫び曲三部作には、  しでん氏、PATO氏、そして村民たちへの深い敬意が認められます。  また、被告が音楽を通じて場をあたためた事実も重く見ます」 【KYOUYA】 「裁判長……」 【カモノハシ】 「よって刑は、  “寝落ちしそうな時は、先に寝ると宣言すること”  “起きたらまた、無理のない範囲で音で遊ぶこと”  以上とします」 【PATO】 「妥当です」 【しでん】 「妥当ですね」 【K】 「平和な判決だ」 【L】 「ありがとうございます……!」 【カモノハシ】 「なお、猫キックおよび猫ビームについては、  双方の信頼関係に基づくじゃれ合いと認定します」 【K】 「そこまで判決に入るんだ」 【KYOUYA】 「大事な争点だったからね」 🎬【エピローグ:閉廷後】 閉廷後。 法廷には、いつものように 笑いと、少し照れくさい静けさが残っていた。 【L】 「KYOUYAさん、弁護ありがとうございました」 【KYOUYA】 「最初にきっかけをくれた人だからね。  今度はこっちが少し返す番だっただけです」 【L】 「うわ、まっすぐ言われると照れる」 【PATO】 「照れてる場合じゃないよ。次は寝る前に言うんだよ」 【L】 「はい……」 【PATO】 「でも、remixは嬉しかったです」 Lは、少しだけ笑った。 【しでん】 「こういう詫びなら、村らしくていいですね」 【K】 「俺、今日ほんとに傍聴だけだったな」 【カモノハシ】 「次回は分かりません」 【K】 「不穏なこと言うなよ」 一拍。 そして法廷中に笑いが広がった。 🎬【ラストナレーション】 寝落ちは、ときどき事件になる。 詫びは、ときどき曲になる。 そして、じゃれ合いは、ときどき法廷の証拠になる。 けれど、その奥にあったものが、 誰かを責める気持ちではなく、 楽しかった時間を大切にしたいという願いだったのなら。 裁かれるべきは、遅れた鐘の音ではない。 問われるべきは、そのあとに何を鳴らしたかだ。 Lが差し出した三つの詫び曲。 PATO検事のやさしい猫キック。 それに返された、照れ隠しの猫ビーム。 しでんが走り抜けた足跡。 Kの少し寂しそうな傍聴席。 そしてKYOUYAが覚えていた、最初に声をかけてもらった日の温度。 それは、ただの内輪話ではなかった。 音でつながった人たちが、 笑いながら、少し照れながら、 互いの気持ちを受け取り直すための裁判だった。 こうして第五幕は、 “寝る前には宣言する刑”とともに閉廷した。 ――猫キックは、信頼関係の範囲内で。 ――猫ビームは、照れ隠し程度に。 ――そして、詫び曲は用法用量を守って楽しくお聴きください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・出来事とは関係ありません。 🎸🎹🎸🥁🎸🎹🎸🥁🎸🎹🎸🥁🎸🎹🎸🥁 同じ合図を 待ってた夜に ひとつの音だけ 少し遅れた 笑いをこらえた 小さな場所で あの日の熱が また灯る 同じ時刻に 鳴るはずだった 胸の奥まで 弾む約束 瞼の重さに 負けた誰かが 朝の光で 小さく笑う 責める言葉を 探したはずが こぼれた声は やさしかった 不器用すぎる 言い訳さえも 音に変えたら 少し笑えた 遅れたって 消えないよ 君がくれた はじめの熱は 三つの音に 姿を変えて ちゃんとここまで 届いてる 叱るふりで 背中を押す 照れた返事が 光になる 言えない気持ち 鳴らしながら 最後に残る ありがとう 並んだメロディ ひとつひとつ 名前を出さずに 想いを映す 走った足跡 見ていたことを そっと伝える 小さな手紙 あの日 声をかけてくれた それがすべての 始まりだった だから今度は わたしが立つよ 困った顔の 君の隣で 受け取ったよ その不器用さ 笑いながら 胸が熱くなる 遅れたぶんを 責めるよりも 増えた想いを 抱きしめたい やさしいふりで 逃げ道ふさぐ 照れた光が また跳ね返る うまく言えない そのかわりに 音で返せば それでいいよ 笑いすぎたら 少し休もう 走りすぎたら 声をかけよう 遅れたぶんを 責めるよりも また鳴らせたら それでいいよ 遅れたって 消えないよ 君がくれた はじめの熱は 少し不器用な 合図になって 今も胸まで 届いてる やさしい目で 逃げ道ふさぐ 照れた光が 宙を舞う 言えない気持ち 鳴らしながら 最後に残る また遊ぼう 眠る前には ひと声かけて 起きたらまたね 音で会おう 少し遅れた 君のメロディ 今日もやさしく 胸に残る