まだ暗い 君に起こされ 河岸へ行けば早すぎた 店はまだ開いちゃいない 仕方なく芝の浜 足元の海に革のボロ財布 拾い上げたら四十二両 これで明日から働かなくていい 家へ飛んで仲間を呼んだ 飲んで笑ってそのまま潰れた 次の朝 金がない 財布もない 君は言った そんなもの知らないよ 夢でも見たんだよ 夢ならなんで手が覚えてる 濡れた革のあの重さ だけど酒で駄目になった僕は 自分のことも信じられない... 酒をやめた 盃を伏せて包丁を握る 朝は河岸へ 魚を売った 一日、一年、二年、三年 気づけば店を構えてた あの日の夢も遠くなった 三年目の大晦日 君が出した革のボロ財布 見覚えなんてありすぎた あの日の海が戻ってきた 夢じゃなかった あの金なら届けておいた 落とし主なく戻ってきた あのままじゃあんたはきっと 駄目になるって怖かった だから夢だと嘘をついた 三年間 黙ってた ごめんなさい... 騙したなって怒鳴るはずが 君の顔を見てしまった この店もこの手の傷も あの嘘がなきゃなかったんだ 怒る言葉が出てこなくて 僕はしばらく黙ってた 「ありがとう」 夢だったのは金じゃなくて 金さえあれば生きられるって 思ってた馬鹿な夢だ 君の嘘から開いた扉 君は笑って酒を出した 三年振りだ一杯どうだい? 盃いっぱい酒を注いだ 懐かしい匂いが鼻をついた 口まで運んでふっと止めた よそう また夢になるといけねえ