Song Cover Image

羽化前夜 〜冷たい風〜#rock

V5.5

土砂降りの雨が打ち付ける ガラスの向こうの黒雲へ 重い影が差す 冷えた床の上で 引き寄せた膝 動かない姿勢のまま 窓辺から見つめる 机の書類束 鏡の冴えない顔 数日前までの日々が 静寂に横たわる 抱え込んだ両腕の隙間で 体温を守る硬い素肌になり 形を溶かして変わる蛹のように 息を殺して暗がりで待っている 濡れた道で滑る 黄色いライトが アスファルトを照らす ガラスに当てた頬に 脈動だけが生きている事を伝える 愛想笑いを取り繕った 昨日の記憶が巡る 摩耗していく時間 交わした約束 逃げ先を選んだこの部屋で スナップ写真が並ぶ 脱皮前の狭い殻の中で 固くなる背中の感覚 新しい羽を開く前の静寂 肌を撫でる息吹を確かめる 窓辺のプランターの土に 埋もれていた緑の命 土を押し上げる強さが 雨粒を浴びて佇む 雨の音が褪せる 隙間の月夜の 街が静まっていく 固めていた腕の力ほどき 痺れた足をゆっくりと伸ばして ひんやりとした冷たい空気を 身体の奥まで深く送り込む 立ち上がり開けたサッシの隙間から 滑り込んでくる夜の冷たい風 湿った土の懐かしい匂いが 滞っていた部屋を満たしていく 背中の殻を押し割るように 身体の輪郭を伸ばし 羽化を遂げる皮膚の熱で 確実な一歩を刻む 薄い羽をゆっくりと押し広げ 湿った夜更けに体液を満たしていく ゼルフィスのように低く回りながら 夜の空気の中へ飛び立っていく