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余白レジスタンス

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V5.5

放課後の教室で 配られた 来年の行き先を書く 白い紙 みんな急に 大人の顔をして 間違えない答えを 小さな字で探す 綺麗な字で書いた 第一志望 「似合うね」って言葉が 少し嬉しくて だけど私の字なのに どうしてだろう 誰かの文字を なぞったみたい ねえ 私は私をいつ決めたんだっけ? 似合うと言われたこの私を ねえ  私は間違ってないはずなのに どうして名前が遠く見えるの? みんなが安心する私に ちゃんと私も いるのかな 答えの並んだパンフレットに 私でいる理由だけ載っていない テーブルの上に 大学案内 表紙の笑顔は よく晴れていた 母が切り分けた 林檎をかじる いつもと同じなのに 少し酸っぱかった 「最後に決めるのは お前だから」 父は募集要項を 私へ向けた 怒られてもいない 無理強いもない だから「分からない」が いちばん言えなかった ねえ 私は私をいつ決めたんだろう? 嫌いじゃないものを選びながら ねえ  私は喜ばれるならいつだって 綺麗な字で書いてきた 消すほど嫌いじゃないのに 残すほど好きか 分からない みんなが見ているこの私を 私も私だと思っていたの? 時計の針が進む音だけ 耳鳴りみたいに響いていた 消しゴムを文字へ近づけて 消さないまま 紙を裏返した 誰にも見せない 白いところへ 震える文字で ひとつ書いた 「私は、何がしたい?」 ねえ 私は私をまだ決めなくていい? 答えのない問いが私を見つめる ねえ  私は間違ってないはずなのに どうして名前が遠く見えるの? たった 一行消さずにいることが 決められた明日へのレジスタンス たぶんまた 同じ朝が来て 綺麗な文字の表を出すだろう だけど裏側の あの一行を 私はもう 消さない 答えはまだ 書けないままで 白い余白に 問いだけが残った