
のり子 「夕暮れ鉄棒微少女」 [Intro] キィ…… キィ…… 誰もいない校庭で 鉄棒だけが まだ鳴っている ぶーーーーん…… 風じゃない 夢じゃない ここは まだ終わっていない [Verse 1] 夕暮れの土の上 雨の跡が黒く光る 校舎の窓は黙ったまま チャイムの余韻だけ沈んでいく 錆びた鉄の横棒に 小さな影が腰かける 名前を呼ぶほど近くない 忘れるほど遠くもない 美しいものじゃなかった 飾れるものでもなかった ただ そこにある微かな点 空の裂け目を見ていた [Pre-Chorus 1] か か か か 警報はまだ低い ぶーーーーん…… 地面の下で 機械神の骨が鳴る これは遊びじゃない これは祈りじゃない 放課後に残された 観測記録 [Chorus 1] 夕暮れ鉄棒微少女 美ではなく 微として 大きすぎる空の前で ただ小さく座っていた 夕暮れ鉄棒微少女 声もなく 手も振らず 破れかけた天井を いちばん近くで見ていた くるりん 世界が反転する くるりん 影だけ先に帰る 夕暮れ鉄棒微少女 静寂の中心で 錆びた鉄棒が 機械神の心音を鳴らす [Post-Chorus] キィ…… キィ…… ぶーーーーん…… ぶーーーーん…… まだ来ない まだ来ない でも もう近い [Verse 2] 渋谷の空が割れた日の 光がここまで滲んでいる 交差点の赤い信号 校庭の水たまりに沈む 誰かが勝ったわけじゃない 誰かが負けたわけでもない ただ円環が閉じたあと 世界は少し黙り込んだ 鉄棒は小さな導体 夕暮れは古い受信機 遠い激闘の残響が 錆の中から戻ってくる 微かなものだけ残された 大きなものほど消えていく だから私はここにいる 音のしない場所で見ている [Pre-Chorus 2] か か か か 非常灯が瞬く ぱき…… ぱきぱき…… 空の膜が乾いて割れる これは神様じゃない これは救いじゃない 眩しすぎる破れ目が また口を開く [Chorus 2] 夕暮れ鉄棒微少女 美ではなく 微として 誰にも飾られないまま 鉄の上で目を開く 夕暮れ鉄棒微少女 怖くない顔をして 怖すぎる空のことを 誰より先に知っていた くるりん 明日が反転する くるりん 記憶だけが落ちてくる 夕暮れ鉄棒微少女 小さすぎる観測点 空を破る円環を ひとりで数えていた [Break] …… キィ…… …… ぶーーーーん…… …… 音が消える …… 校庭が 息を止める …… ぱき [Bridge] あの日 渋谷の上で 巨大な輪が開いた ビルの窓は白く焼け 横断歩道は光に沈み 人の声も 車の音も 全部 一度だけ消えた 神様ごっこはやめな そう言った声が まだ地面の下に残っている 私は その声を拾うために ここにいる 私は 勝利を歌わない 私は 悲劇を飾らない 美ではなく 微 名もなく 小さく 消えそうなものだけが 本当の異常を 最後まで覚えている [Final Pre-Chorus] か か か か 警報はもう近い ぶーーーーん…… ぶーーーーん…… 地下の低音が太くなる キィ…… 鉄棒が応える ぱき…… 空が裂ける …… いちばん大きな音は 無音だった [Final Chorus] 夕暮れ鉄棒微少女 美ではなく 微として 眩しすぎる空の傷を ただ静かに見ていた 夕暮れ鉄棒微少女 祈らずに 逃げもせず 機械神の残響を 錆びた鉄で受け止めた くるりん 世界が反転する くるりん 名前だけが消えていく 夕暮れ鉄棒微少女 小さな影のままで 大きすぎる神様を もう一度だけ止めていた [Outro] キィ…… キィ…… ぶーーーーん…… か か か か…… ぱき…… …… 夕暮れの校庭で 鉄棒だけが まだ鳴っている 誰もいない でも 終わっていない

