
キキョウのうた
春のにおいが 少し冷たい 都会のアパート 窓きしむ朝 帰郷はしない 夢をつかむまで 母に言い切った 雪舞う睦月 ギターひとつが 頼れる相棒 ほつれたケースを 肩にのせて 地下のライブで 名前も呼ばれず フライヤーだけが 床に散らばる 「聴きようがない」 四角い箱のえらい人 誇りはきれいに 掃き出され 看板だらけの 街の隙間で 流れる悲しみは 涙か雨か 傘もさせずに 歌を抱きしめた 届かない声 誰もふり向かず カレンダーはもう 半分めくった いつしか心の光は 消えていて 夢をたたんで カバンにしまう 季節はもうすぐ 暑さの予感 桔梗咲くころ ただいまって言う 土のにおいが 胸にしみこむ 無理だったよと 笑いにまぎれ よく頑張ったねと 誰かが言う 庭の隅には 色とりどりの花たち 懐かしい縁側に 腰をおろす もう一度だけ 口ずさんでみる あの日夢みた 舞台と信じて

