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零時零分のホーム

V5.5

最終列車に揺られて 知らない駅で目を覚ました 窓の外に見えた時計は 零時零分で止まってる 扉が静かに開いて なぜだか僕は降りていた 人影のないホームには 風さえ忘れられていた 向かいのホームに 誰かが立ってる 僕と同じ顔で 僕じゃない服を着て 知らない誰かと 幸せそうに笑ってた あれはきっと あの日 選ばなかった僕だ もし右へ行っていたら もしあの手を離さなければ 数えきれない「もしも」が ホームの向こうを歩いていく 夢を叶えた僕がいた 誰かを愛した僕もいた 遠い街で暮らす僕も ひとりで泣いている僕もいた どれが正しかったんだろう どれを選べば よかったんだろう そう思った瞬間 向こう側の僕たちも こちらを見ていた そして 同じ顔をしていた 僕の人生を 羨むような顔をしていた 零時零分のホームで 選ばなかった僕とすれ違う 手に入らなかった未来ばかり 綺麗に見えていたけれど 向こうから見れば この僕も 誰かが選べなかった 未来なんだ 突然 時計の針がひとつ動いた 零時零分から 零時一分へ 止まっていた風が吹き 遠くでベルが鳴った 列車の扉が開く 向こうの僕が 小さく笑った 声は聞こえない だけど唇だけが動いた 「そっちも悪くないだろ」 僕も笑った 「そっちもな」 列車が走り出す 窓の向こうで いくつもの僕が遠ざかる 選ばなかった人生は もう追いかけない 間違えた日も 失くしたものも 全部がここへ 僕を連れてきた 朝が近づく 窓に映った顔は 昨日と何も変わらない だけど不思議と この人生をもう少し 歩いてみたくなった 次の駅の名前は まだ見えない それでいい 僕は今度こそ 眠らずに 窓の向こうを 見ていよう