静けさのなかで あなたが息をすると 世界は少し 透明になる それは 言葉のまえにある声 形のあとに残る やわらかな余白 あなたもわたしも、みんな もとはひとつの 見えない水面 誰かになろうとせず 何かを示そうともせず ただ、そっと 「ないけどある」の気配を灯つづけていた ひとりでは触られないけれど ひとりがいなければ 決して現れない ——そんな世界が 今ここに 静かに息をしている 優しさに触れたとき 愛の名も知らずに震えたとき その世界は ふっと あなたの心の後ろで 開いている 名もなく 境もなく けれど、確かにある あなたの奥に わたしがいて わたしの奥に あなたがいる それは 「ないもの」と呼ばれた いちばん 豊かな存在


