
白き巨大な円形の謁見室 天井は見えず 光はどこからともなく降り注いでいる その中央にシルフが立っている その正面に 上級審問官ラダマンテュス その背後に研究者アザゼル 最奥 高座に座すはゼウス ラダマンテュスが言う 「この存在に危険性はない だが未来は測れぬ まるで不発弾のようなものだ しかし これは審問官が判断すべきことではない 追放か否か 決するは御身である」 ゼウスが言う 「世界の理が崩れぬならば 追放は不要 与えるべきは 慈悲である」 謁見室に静寂が落ちる ----------------------------------- そのとき シルフの身体が かすかに揺らぐ アザゼルが目を細める 「外側を覆う悪が 削れはじめている 天国の善と触れ合い わずかずつ中和が進んでいる 問題は 均衡が崩れはじめていることだ 内の善と外の悪は 完全に等しいからこそ安定している だが一定の域を越えれば 連鎖が始まり 化学反応のように 止まらぬ崩壊が起きるだろう」 ゼウスが静かに言う 「それが世界の理の意志であれば仕方がないことだ 安らかに世界の理へ戻るまでこの天国で暮らすことを許す それが唯一の慈悲である」 アザゼルが一歩踏み出す 「ゼウスよ それではあまりにこの子が不憫だ 一つだけ方法がある 善と悪を入れ替えるのだ 内側を悪に 外側を善に だが二つの境界を 一時的に弱めねばならない 善と悪を混ぜぬよう隔てている 愛の境界 そして今 外郭を形作っている境界」 「我はお前にシルフという名前を与えた これが外郭をつかさどる境界だ そしてあの方から与えられた真名があるはずだ その二つがお前の境界をつかさどる それをお前の意志で弱めなければならない 弱まれと念じながら唱え その名前を」 シルフは しばし思案し そして叫んだ ----------------------------------- 「ルシフー!!」 ----------------------------------- 光が弾ける 外側を覆っていた悪が内へ流れ込み 内に宿っていた善が外へと広がる 混ざらぬまま 位置だけが反転する 角は崩れ 光を帯びた九つの耳となる 悪は内に 善は外に 身体は伸び 声は変わる 穏和な性格は奔放へ 息子は娘へと反転する そこに立っていたのは 新たに生まれた女神であった -------------------- 交響詩「ー」シリーズ https://suno.com/playlist/2b1d48d4-5c42-48da-9614-ee36dbe35a05

