
丑三つ時を ひとつ過ぎ 誰かが何かを数えてる 「ひぃ ふぅ みぃ よ」 戸が鳴った 障子に指で穴を開け 覗いた先には赤い紐 こちらと向こうを結んでる どちらが向こうか 知らないが かごめ かごめ 声だけ先に回ってる 輪になれ 輪になれ 一人分だけ空けておけ 「後ろの正面 だぁれ?」 ――まだ 名前を呼んではいけない 「ワタシキレイ?」 答えぬ口に紅を引く 一塗り 二塗り 三塗り目で 鏡の私が先に笑う 赤ならこちら 青ならあちら 白を選んだら どこへ行く? 誰も知らないはずなのに 白だけずっと減っていく カルトオカルト 知らない世界を知っていた 午前四時 雨もないのに 軒から雫が落ちている ぽたり ぽたりと九つまで 十だけ天井から聞こえた 髪を結んで また解く 解いた数だけ長くなる 肩までだった黒い髪 畳の縁まであと少し あぶくたった 煮えたった 蓋を取るのはまだ早い 通りゃんせ 通りゃんせ 帰る人から 目を閉じる 花いちもんめ あの子が欲しい ――あの子ってどの子? 全員一斉にこちらを向いた 「もういいかい?」 返事はないのに 戸が開く だるまさんなら振り向くな 足音だけが止まらない 結んで 開いて 手を打って 隣の手だけ熱がない 離そうとしても離れない 握った覚えもないくせに カルトオカルト 遊びはいつから本気になった? 陽の出前が一番暗い だから もう少しだけ待てばいい 東が白む 酉が鳴く これで終わり! これで終わり? そう思ったのに… 唸り声が 部屋の中から聞こえる 「かごめ かごめ」 籠の中には 誰もいない 誰もいないと確かめるたび 部屋の内側 人が増える あの子が欲しい あの子じゃ分からん ならば名前を呼んでみる? 「後ろの正面 だぁれ?」 振り向かないで! 振り向かないで!! 振り向かないで!!! カルトオカルト 今夜から一人分 輪を広げておいて?

