壊れたリングの 光が消えて 空の席だけが 胸に刺さった 俺の名前が 少し遠くなる ハンガーの夜に 息が詰まった 検査室の 白い明かり 画面に並ぶ 赤い文字 同調負荷 鼓動不安定 適合だとか 鍵だとか 聞き慣れた言葉が 今日は痛かった 母さん 思わず呼んだ声に カーサが振り向いた 俺を見てるのか それとも 俺の中にあるものを 見てるのか カーサは少し 呆れたように 何を今更と 息を吐いた 熱を出した夜も 泣きながら立った朝も 私はずっと あなたを見ていた 今さら 人間かどうかなんて 母さんに 聞くの 器じゃない 空っぽじゃない その胸に 鼓動があるなら 器じゃない 代わりじゃない 呼ばれた名前で 帰ってこい アルカ アルカ その声が 夜をほどいて 青い帰還灯に 変わっていく アルカは小さく 目を伏せた ごめん 母さん そんなこと 聞くべきじゃなかった カーサはそっと 息を吐いた 聞いていいのよ 不安なら何度でも でも次に 忘れたら 検査より先に 抱きしめるから レーチェルは 少しだけ黙る 俺をどう見てる パイロットとしてか 適合者としてか それとも俺としてか 私がなんで 帰還のたびに ハンガーへ行くか 知っていますか パイロットの 帰還確認のためだろ それは書類の確認上 必要なことです でも なんで 分かんないかな ブレンダンが そういうことかと 低く笑った おまえ 可愛いこと言う時も あるんだな 部品が そんな顔するか 馬鹿野郎 腹は減ってるか 人間はな 悩むにも燃料がいる プロテイン飲むか その雑な声に 少し笑えた 悔しいくらい 嬉しかった 空の席を 見てしまった夜 俺は少しだけ 自分を疑った けれどここには 俺を見る目がある 鍵じゃなく 器じゃなく 帰ってきた 一人として 待つ声がある 器じゃない 空っぽじゃない この胸に まだ鼓動があるなら 器じゃない 代わりじゃない 呼ばれた名前で 立っていく 母さんの声が 俺を叱って 言いかけた言葉が 胸を照らして オヤジみたいな 馬鹿な声が 夜を少し 軽くした 器じゃない 一人じゃない まだ答えは 全部見えなくても 俺はここにいる アルカとして ここにいる ハンガーの夜に 工具の音が戻る 空の席は まだ怖いけれど 俺の手には 温もりが残った