「忘れないで…」 は言わない 夜明け前の門がひらく 灯りはまだ眠ってる 呼び慣れた声 背中に残して 独り 外へ出た 昨日までのわたしなら 振り向いて笑えたのに 名前を呼ばれる そのたびに 足が少し止まる 細い糸が光ってる あなたからわたしまで こんなにも結ばれてた 知らなかった 名の糸をほどいて ひとつずつほどいて あなたの明日がここに残るなら 声も 傷も 旅した夜も わたしだけが覚えてゆく だから最後に もう一度だけ わたしの名を呼んで 「馬鹿なこと言うなよ」って 笑うみたいに怒る声 「ほかにあるだろ、まだ探せる」って 誰かが腕をつかむ その手の熱を知っている だからこそ離せなくなる 正しいことを選ぶより ずっと... むずかしい 切るんじゃない 捨てるんじゃない あなたといた時間まで 消えはしない ただその先を たどれなくするだけ 名の糸をほどいて ひとつずつほどいて あなたの明日がここに残るなら 朝も 雨も 笑ったことも わたしだけが抱いてゆく 「忘れないで」 と言えないことが こんなに痛いなんて 最後の一本 あなたにつづく いちばん古い糸 ほどけば終わる それでも 手が動かない… あなたは何度も わたしを呼ぶ まだわたしを知っている 名の糸をほどくよ これで最後だよ あなたの明日をここに残すから 声も 傷も 旅した夜も なくなったことにはしない わたしが全部 覚えている 「忘れないで」 は言わない 知らない人みたいに あなたが通り過ぎる なぜだろう 少しだけ振り向く わたしも振り向く 「それだけでいい...」