今日はグレンを抜かしたガーベラの恋人達がジンラの神殿に集まっていた。 「やった、これで酒が飲めるぜって、水かよ!」 テーブルの上に用意されていたのは、水である。ラーズはがっかりしていた。 「ジンラ、そろそろ許してくれよ。悪いのは全部ハロルドだって」 「おい」 とハロルド。 「私だってつい最近知ったばかりなのに」 サラディンが言った。 「サラディンは、この前神殿で彼女に会ったとき、秘密にしてたじゃないか」 ジンラが恨めしげに言った。 「さすがにあそこでばらすのも……」 「オルガも彼女の話をしながらも秘密にしてたな」 ジンラは次にオルガをにらんでいる。 「すまん。私の口からばらすわけにもいかず」 「グレンも彼女のことを知ってるんじゃないの?」 サントスが聞いた。 「グレンは、びびってこなかった」 ラーズが答えた。 「僕は全然知らされてなかったんだけど、これは何の集まり?」 ラクアが聞いた。 「言ったら来ないかと思って」 とラーズ。 「僕は、あっちのガーベラとどうこうなる気はないし、ガーベラはガーベラだ。もうそれでいい」 「ラクアはあっさりしてるな」 ジンラが言った。 「私は彼女にすまない気持ちで一杯だ。ラーズがもっと早くに教えていてくれれば、あの事件はなかったのに……」 ジンラはぶつぶつ言っている。 「悪かったって」 「ところでサラディン、何勝手にこっちに連れてきてるんだ」 ハロルドがサラディンに文句を言った。 「別にいいだろ」 「一緒に風呂に入ったんだろ」 「入ってない。一緒に入ったのはルチアだ」 「そうそう。それでルチアは一目でガーベラだって気がついたんだ。子供達にも彼女のことを知らせるかどうかって話でみんなを集めたんだよ」 ラーズが言った時、アマンザがやってきた。 「話に割り込んですいません。僕は、ジェイクには教えたいんです。ジェイクも、もう一人のお母さんを見て何かを感じていたから」 「だが、あまり大勢が知ると、ヒルデリアの耳に入ることになるだろう。それはまずいんじゃないか?」 ハロルドが言った。 「ヒルデリアも、最後には見て見ぬ振りをしてくれると思いますけどね。なんといっても、ハロルドと私の子供を産んでくれたんだし」 とサントス。 「私は、自分の子には私から言う気はないな。彼女を前面に出すとどうしてもあの国に肩入れしたくなってしまうだろう。神として、それもどうかと思う」 ラクアはラクアらしく言っていた。 「そういえば、ハロルドは最近の龍の巫女に熱を上げてるそうじゃないか。そういう噂を聞いたよ?」 ラクアが続けて言った。 「え? 別に熱はあげてないが……最近よく顔を見せてたからかな? ラメーンが人間に変身してあの国でいろいろやったんでその後始末だ。人間に化けたとき牢屋に入れられていたんだぞ。全く信じられない」 「信じられないのはラメーンを牢屋に入れた方だと思うが……」 ラクアがあきれて言った。 「そうだよな。バカだよな」 とラーズ。 「じゃあ、ハロルドは龍の巫女に乗り換えたってことで」 ジンラが言い出した。 「乗り換えてないだろ。私の話を聞いてたのか?」 「散々あっちのガーベラと仲良くしたんだろ? そろそろ遠慮したらどうだ?」 「そうですよ」 とサントス。 「まさかサントスまであの女に興味をもったわけじゃないだろうな。サントスは、ガーベラとだけ仲良くしてろ」 「ガーベラが、彼女ももう一人のガーベラだからって。最初私は、ガーベラが私の相手をするのが面倒くさくて彼女に頼んだのかなって思っていたけど、彼女は違うって。どっちのガーベラも私のことが好きって言ってくれたんです。普通の人間の女性なら、ガーベラになれたとしても、見目麗しい神にしか会いにいかないだろうに。グレンの気持ちがよく分かりますよ。彼女は、しょっちゅう神の国に来られるわけでもないのに、私に会いに来てくれたんだって思うと、うれしくなりますよね」 サントスがうれしそうに言った。 「ああ、ますます彼女に会える回数が減りそう。これだからみんなに言いたくなかったのに」 ラーズはぶつぶつ言っていた。 「ハロルドとラーズは散々彼女と仲良くしたんだからもういいだろ」 とジンラ。 「やだーもっと仲良くしたい!」 ラーズは駄々をこねるように言った。 「彼女は何をあげたら喜ぶだろう。おいもが好きだってのは前に聞いたけど、他にも知りたい」 とサントス。 「彼女のことはイシュタールから散々聞いたから知ってるぞ。食べ物はなんでも喜ぶ。あそこは海がないから、海の食べ物はすごく喜ぶらしい。それでハロルドがイカやらカニをあげたとか」 「その話はやめろ」 ハロルドが恥ずかしげに言っていた。 「ハロルドがイカにカニを? ふっ」 ラクアは鼻で笑っている。 「それから果物も好きだ。毛がある動物も好きで、ハロルドが贈った犬を愛してるらしい」 「贈ったんじゃない、貸してるだけだ」 「コウモリより犬の方がかわいいかな」 オルガが小声でぼそっと言っていた。 「動物が好きだから変わった神獣が産まれているのかな?」 とサントスは首をかしげている。 「サーラもあのペンギンに夢中だよ。氷の中の花の配置は毎日違うんだ。楽しいよな」 とラーズ。 「ところで、でかい黒ネコ、私の神獣らしいんだが、私は全然みてないんだが……」 オルガがハロルドに言った。 「キュリアがもう自分の神獣にしちゃってる。まあいいじゃないか」 とハロルド。 「いいがどのくらいでかいんだ? このくらいか?」 オルガが両手を広げて聞いていた。 「いや、もっとでかいぞ。何せキュリアが乗れるくらいだからな」 「猫じゃなくて豹なんじゃないのか?」 「それが見た目は猫っぽいんだ」 「アマンザ、お酒」 ラーズがこっそりアマンザに頼み、ジンラが聞こえたのか「だめだ」と言っていた。 「ジンラ~」 「ラクアは、別のガーベラだと分かっていてもあっちのガーベラと仲良くなるのか?」 サラディンがラクアに聞いた。 「なるよ。ガーベラはガーベラだ」 「人間姿には興味がないってことか?」 「人間だとは思わない。ガーベラはガーベラ」 「お前達まで興味をもたなくていい。あそこにむやみに行くな」 一番行っているハロルドが言っていた。 「ハロルドが龍の巫女を溺愛しているという噂を流そう」 ジンラが言い、「それはいいな。そうしよう」とサラディンが同意していた。 「やめろ!」 (結局、子供達にばらす話は結論がでないのかあ) アマンザは残念そうだった。 その頃グレンは自分の神殿にいた。 「どういう話がされているんだか。ああ、みんな知ってしまった。全員が彼女に興味を持ってしまったら、私と会う回数も減ってしまうなあ」 グレンはゆりが怒られなくてよかったと思いながらも、残念なような気分でいたのだった。