木曜日の夜。 部屋の灯りはデスクライトだけ。 机の前に座る彼女は、ヘッドホンを耳にかけてギターを抱えている。 身長152センチ。 椅子に座ると、アコースティックギターが少し大きく見える。 パソコンの画面には録音ソフト。 小さなオーディオインターフェースのランプが静かに光っている。 録音ボタンを押す。 カチ。 彼女は最初のコードを鳴らす。 やわらかいジャズコード。 温かい響きがヘッドホンの中で広がる。 ゆっくりしたアルペジオ。 静かな夜の空気に合う音。 彼女は少し頷く。 この感じ、好き。 指がゆっくりメロディを弾きはじめる。 滑らかなフレーズ。 レガートでつながる音。 ほんの少しスウィングするリズム。 コードの響きは豊かで、どこか落ち着く。 彼女は肩を少し揺らす。 楽しい。 フレーズが少し速くなる。 指が弦の上を軽やかに動く。 細かいフィンガーピッキング。 クロマチックな音が自然に混ざる。 メロディが流れるように続く。 誰かに聴かせるわけじゃない。 でも、だからこそ自由だ。 彼女は少しだけ笑う。 次のフレーズ。 音が少し上がる。 メロディが重なり、ハーモニーが広がる。 音楽がゆっくり盛り上がる。 そして、テーマ。 明るいジャズのメロディ。 軽やかだけど温かい。 まるでゆっくりした夜ごはんの時間みたいな雰囲気。 彼女は楽しそうに弾く。 それから突然、指が速くなる。 ソロだ。 高速のフィンガースタイル。 弦を走るフレーズ。 タッピング。 難しいジャズの音。 でも音は整っていて、どこか優雅。 テクニカルなのに、聴いていて気持ちいい。 彼女は少し前のめりになる。 ヘッドホンの中の世界だけに集中する。 途中でリズムが変わる。 ギターのボディを軽く叩く。 トン。 ミュートした弦を刻む。 タッ、タッ。 パーカッシブなグルーヴ。 それからまたメロディが戻る。 最初のテーマ。 さっきより少し柔らかい音。 コードが重なり、温かい響きになる。 彼女は最後のコードを鳴らす。 ポロン。 ハーモニクスがふわっと広がる。 静かな余韻。 録音が止まる。 彼女はヘッドホンを少しずらす。 再生ボタンを押す。 さっきの演奏が流れる。 彼女は満足そうに頷く。 「いい感じ」 木曜日の夜。 誰にも知られていない、小さなジャズセッションだった。