[intro] 日記帳の表紙は羊羹の色です。 午后三時、わたくしは家を出ます。 目的はひとつ、あの川の源流を探すことです。 では、今日の記録を始めませう。 [verse 1] 時獄、無垢月一日。空は晴天であります。 岸辺を歩けば、メロンのやうな香りがします。 流れる水は蛍光色で、底では白墨が育ちます。 わたくしはそれを数へながら、歩を進めました。 影がひとつ、わたくしを追い越してゆきます。 これは昨日のわたくしでせうか。 [chorus 1] つまるところ、これは正しい散歩です。 コンパスは北を指してゐてくれます。 奇妙に光るあの水面へ、歩いてゆくだけなのです。 思考はLucid、心はいつも平坦です。 それで良いのです。 [verse 2] 従月二日。天気は確か、曇りです。 今日は水面に、活字が浮かんでは消えてをります。 拾ひ上げますと、それは誰かのための脚本でした。 岸には水晶のやうな卵が、ごろごろしてゐました。 わたくしはそれを蹴飛ばしながら、さらに上流へ。 鳥籠から逃げた鳥が、わたくしを笑ひます。 [chorus 2] けだし、これは定められた道筋です。 天球儀も同じ場所で廻つてをります。 燐光を放つあの流れへと、ただ歩けば良いのです。 疑問はInfinite、されど答えは不要です。 それで良いのです。 [bridge] 欄外に記します。 夜になりますと、川は一層輝きを増します。 対岸の風景が、時折、逆さまに見えるのです。 A cryptic message from the phantom. わたくしは、この日記をいつか読み返すのでせうか。 或いは、この日記がわたくしを読んでゐるのでせうか。 [outro] 腐月三日。 今日はもう、歩くのをやめにします。 川の輝きが、あまりに眩しいからです。 筆を置きます。静けさが落ちてきます。

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