
午前零時の窓辺から 今夜も黒い靴が降る まだ生きていたのかと 嬉しそうに君は笑う 死ぬのはいいぞ 楽になる 朝も仕事も来なくなる そんな勧誘文句を並べ 勝手に紅茶を淹れている 迎えに来たなら早くしろ そう言う僕にカードを配る 急ぐ旅でもないだろう 死神のくせに暇らしい 負けたら僕を連れていく 勝ったら朝まで もう一度 なのに君は札を落として 今夜も露骨に負けている また明日 死神 今日も死ぬ暇がなかった 笑わせるな 歌うなよ 未練なんか増やすなよ また明日 死神 夜明けが君を連れていく 死ぬのはいいと誘うくせに 君がいるから死ねやしない 昨日はチェスで 今日は酒 明日は何を持ってくる 明日の話をするなんて ずいぶん生きる気じゃないか 違う 会いたいわけじゃない ただ眠れない夜なだけ 君は分かった顔をして 僕のグラスを空にする 死にたい夜にだけ現れる それなら僕はどうすればいい 君に会うには死を願い 君と会うため生き残る また明日 死神 今日は少し早かったな 迎えに来たと言うわりに 帰り支度が早すぎる また明日 死神 約束なんてしていない それでも君が来る気がして カーテンだけは閉められない 俺が死ねば おまえとずっと一緒にいられるのか さて それはどうかな 私はただの運び屋で おまけに気分屋だからな それならまだ 死ぬわけにはいかないし 死に急ぎたくもなる 少し黙った君が笑う おまえみたいな 面白いやつは好きだぞ また明日 死神 そんな言葉を残すなら 僕を置いて消えるなよ 朝日なんか連れてくるな また明日 死神 君の好きが分かるまでは 死ぬには少し早すぎて 生きるには君が眩しすぎる また明日 死神 今日も答えは聞けなかった だから今夜を生き延びて 次の夜まで待っている 午前五時の窓辺から 黒い背中が朝に溶ける じゃあな 死神 振り向かない君の声 また明日

