
しちじ じゅうにふん 目覚ましを止める トースト一枚 珈琲はブラック はちじ じゅうさんぷん発 いつもの電車 昨日と同じルートなら 今日も正解のはずだった 財布の中のレシート ひゃくきゅうじゅうはちえん ろっぴゃくよんじゅうえん 数字にできるものだけは ちゃんと答えを返してくれる 子どもの頃の答案用紙 最後には必ず答えがあった でも大人の問題には 解答欄すら見当たらない 普通というエックスを 僕に代入してみる 仕事 時間 予定 将来 計算は合っているはずなのに なぜか僕には当てはまらない 足して 引いて 掛けて 割って それでも余るものがある 昨日 プラス 今日 イコール 明日 そんな簡単な式なら 迷うことなんてないのにな 昼休み じゅうにじ よんじゅっぷん 十円玉を落とした 転がる硬貨を追いかけて 予定のルートを三歩外れた 拾ってくれた知らない人が 「どうぞ」と笑った たったそれだけ なのに今日というグラフが ほんの少し上を向いた 最短距離が 最適解とは限らない 遠回りした場所にしか 落ちていない答えもある 確率ゼロじゃないなら まだ可能性は残ってる いや ゼロだったとしても 僕が一本線を引けばいい 帰り道 赤信号で立ち止まる 隣では子どもが 水たまりを飛び越えた お母さんに怒られて それでも笑ってる ああ 正解じゃなくても 笑えるんだ その瞬間 ずっと解けなかった式から ひとつだけ 数字が消えた 間違いを消した消しゴム 遠回りした帰り道 予定外に出会った笑顔 選ばなかった選択肢 どれかひとつ欠けても 今の僕にはならなかった ならば書こう 僕 プラス 失敗 プラス 偶然 プラス 遠回り プラス 明日 イコール まだ分からない それが今の 僕の答えだ 解なしじゃない これはまだ 途中式なんだ 最後のページを 先に見るのはやめた 答え合わせは ずっと先でいい 今日という数字を ひとつ足して 僕はまた この方程式の続きを生きる

