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トビウオ

V6

12時 腹が鳴る いや 胸の方が 先に鳴る 今日も のれんを くぐったら いらっしゃいが 聞こえる 朝から鉄骨 空の上 街を見下ろす 鳶職人 腰の道具が リズムを刻む 風に紛れて 鼻歌ひとつ 昼の合図で 地上へ降りる 仲間はコンビニ オレは右 角を曲がれば 湯気の向こう 結んだ髪が 今日も揺れる あご出汁塩を ひとつ頼んで 言いたい言葉は また飲み込む お仕事 お疲れ様です それだけで 午後もやれそうさ 高い足場じゃ すくまないのに キミの前では 足が止まる 箸とレンゲは 揃えられても 話のキッカケ 見つからない トビウオ トビウオ 恋をした鳶が 昼に降りる あご出汁の湯気 キミの笑顔 毎日ここまで 引き寄せる トビウオ トビウオ 空には慣れても 恋に不慣れ いつもの ですねの その先へ あとひと言が 言えなくて 月火水木金 また同じ席 券売機の前 迷うフリ 塩か味噌か 結局は塩 キミがいない日は ちょっと無口 仲間に言われた 飽きねえな 出汁が いいんだって まあそうだ 透き通ってんのは スープだけ オレの下心 見えそうで ある日 袖から顔を出した 腕の日焼けを キミが見て お仕事って 何してるんです? 急に心臓 フィルを打つ 鳶ですって 答えたオレに じゃあ うちの出汁と 仲間ですね そっちは魚で オレは鳥 キミが笑って 箸が止まる 怖くないんですか? 仕事だからね 初めて交わした 注文以外 替え玉ひとつじゃ 足りないくらい その声をまだ 聞いていたい トビウオ トビウオ 恋をした鳶が 昼に降りる あご出汁の湯気 キミの笑顔 今日は言葉まで 届いたよ トビウオ トビウオ 空には慣れても 恋に不慣れ いつもの ですねの その先で キミとオレとの 話が始まる 次の日 君が指をさす 今日は あのビルですか? 窓の向こうの 工事現場 あそこの上に オレがいる 気をつけてねの ひと言を 胸のポケットに しまって帰る キミからオレが 見えなくても 今日はいつもより 街が明るい 閉店前まで 待つ勇気より 昼の一瞬 使う勇気 客が途切れた 会計で 用意した言葉を ほどいてく 休みの日に 会えませんか? 声が少しだけ 裏返る キミは笑って ラーメン以外? もちろん 今度は すぐ言えた トビウオ トビウオ 恋をした鳶が 有頂天 あご出汁の湯気 キミの笑顔 いつまでも ここで 見ていたい トビウオ トビウオ 空には慣れても 恋に不慣れ いつもの ですねの その先に キミの名前が 増えた昼 トビウオ トビウオ 次の日曜 駅の前 作業着じゃない オレのこと キミが見つけて 手を振るかな? でも明日も 来ますよね? もちろん 塩をひとつ 12時 腹が鳴る いや 胸のほうが 先に鳴る

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