
[Intro] もし私が、一つの国を持ったなら。 争いは減らせるだろうか。 幸福は増やせるだろうか。 これは理想ではない。 ひとつの国家設計実験である。 [Verse 1] 最初に考えたのは、 苦しみには偏りがあるということだった。 同じ国に生まれても、 重すぎる荷物を背負う者がいる。 ならば、その重さを皆で背負えばいい。 誰か一人の夜より、 皆で迎える朝のほうが、 穏やかな景色になると思った。 私は痛みを集め、 できるだけ均等になるよう配り直した。 しかし観測された結果は、 予測とは異なっていた。 人々は言った。 「痛みが増えた」と。 [Chorus 1] ジェレミ・ベンサムが言っていた。 幸福は増やせる。苦しみは減らせる。 全体として見れば、きっと世界は良くなる。と。 ならば私は、 何を見落としていたのだろう。 [Verse 2] 次に考えたのは、 幸福にも偏りがあるということだった。 届きすぎる場所から、 届かない場所へ移してみる。 笑顔も、温もりも、 分け合えるものだと思っていた。 私は幸福を集め、 必要だと思う場所へ運んだ。 しかし人々は言った。 「奪われた」と。 [Chorus 2] ジョン・スチュアート・ミルは言った 幸福には質があり、数えるものではない。 比べた瞬間に、別の形へ変わるのだ。と。 ならば私は、 幸福を物のように 扱ったのが誤りだったのか。 [Verse 3] それでも私は、 諦めきれなかった。 幸福を設計できないのなら、 苦しみだけでも減らそうと思った。 未来の悲しみを避けるため、 今ある不満を受け入れてもらう。 それは犠牲ではなく、前進だと信じていた。 しかし人々は言った。 「今を失った」と。 [Chorus 3] カール・ポパーの考えによると 幸福は設計できない。けれど、苦しみは減らせる。 幸福の最大化より苦痛の最小化が優先される。 ならば私は、 人の感覚さえ 測り違えていたのだろうか。 [Bridge] 私は、すべてを委ねた。 政治はそっきんへ。 判断は大臣へ。 未来は技術者たちへ。 私はただ、 皆の声を聞く者でいようとした。 誰かの意見を拾い、 誰かの願いを掲げ、 誰も傷つかない場所へ 歩いているつもりだった。 民の声という 美しいマントをまとって。 それは透明だった。 いつしか私は、 何も身につけないまま、 喝采のない行進の先頭にいた。 裸の王様として。 [Outro] 何を守ればよかったのか。 何を選ぶべきだったのか。 誰かの答えを借りても、 それでも私は答えをだせなかった。 周囲の声という服を着て、 正しさというジャケットを 身につけているつもりだった。 けれど、 それは本当に存在しているのだろうか。 ちゃんと、 周りにも見えているのだろうか。 それとも…… 私は 裸のまま歩いていることに まだ、 気づいていないだけか。

