
雨の音が消えた 窓を叩いていたはずなのに 水滴だけがガラスを滑る 遠くで揺れていた街の灯りも なぜか今日は静かだった 時計の針が動いている それなのに何も聞こえない 僕の呼吸さえ 少しずつ遠くなる 世界が音を忘れる前に もう一度だけ君を呼びたい 届かなくても構わないから この声だけは消えないで 風も 雨も 街も眠って すべてが静寂に沈んでも 最後にひとつ残る音が 君の声ならいい 信号が青に変わる 誰もいない交差点 走っていく車のライトだけ 無音の夜を横切った コンビニの白い光 閉じた踏切 揺れる木々 見慣れたものはそこにあるのに 世界だけが遠くなっていく ねえ 僕らはいつから 当たり前の音を 聞かなくなったんだろう 笑った声も 泣いた声も 「またね」も 全部奇跡だったのに 世界が音を忘れる前に 君の名前を胸で叫んだ 声にならないこの想いまで どうか連れていかないで 何億もの音の中から 僕は君を見つけたんだ それだけでもこの世界を 好きになれた気がした ひとつ またひとつ 音が消える 雨が消える 風が消える 街が消える そして 僕だけになる 静かだ こんなにも 静かだったんだ そのとき 遠くで 君が笑った たったそれだけで 世界が息をした 雨が戻った 風が走った 踏切が鳴った 街が目を覚ました 世界が音を思い出した 君の声から すべてが始まった 世界が音を忘れる前に 伝えたいことがまだあるんだ ありふれた今日も くだらない話も 全部失くしたくない 明日また君に会えたなら 特別な言葉はいらない ただ 「おはよう」 その一言を ちゃんと聞かせて そして僕も 君に返すから この世界で 一番普通の声で

