
黒瀬玄斎: ふふ……これはこれは、“紅花”とやら。 民草どもが持ち上げた女剣士が、わざわざ犬死にに来おったか。 女の分際で刀を抜くなど、見苦しいことよ。 お七: ……咲くも散るも、女の勝手。 見苦しいは、血に酔って咲けぬ男のほう。 黒瀬玄斎: ぬかせ! この世は紅ではなく、黒で塗り潰すものだ。 金も権も、すべて我が手にある。 お前のような花は、踏みつぶされて終いだ。 お七: 踏まれても咲くが、花というもの。 だが、花は咲くたび──誰かの血を吸って紅くなる。 黒瀬玄斎: ふん、口だけは達者なものだ。 その薄刃で、何人斬った? 血の花を咲かせて悦に入る……化け物め。 お七: 血を咲かせたのは、アタシじゃない。 業が勝手に咲かせただけよ。 私は──その花を摘むだけさ。 黒瀬玄斎: グアァァァ! お七: ……咲け紅花。 この世にまだ、春は遠い。

