愛しております お慕い申しております 朝な夕なに あなたを想い 変わらぬ心で 待っております 濡れた羽織は お預かりして 今宵もこちらで 眠りましょう あなたを呼ぶ声 聞こえたでしょうか 風の悪戯で ございましょう 門なら閉じて 灯りも閉じて 誰にも二人を 見せぬよう 愛しております お慕い申しております あなたのお傍に おりますこと それだけが私の 願いごと ひとつ花びら 落としたならば ふたつもみっつも 同じこと あなたに触れたい 花なのでしょう ならば手折るも 愛でしょう 昨日届いた あの方の文 どこかへ消えて しまったようです あなたは黙って こちらを見つめ 「そうか」と静かに 笑いましたね 近頃ずいぶん お静かですね ようやく心が 通いましたね 「あの人はどこへ」と お尋ねでしょうか まあ まだ覚えておいでですか 誰のことでしょう 存じ上げませんけど もうお会いには なれぬでしょう 愛しております お慕い申しております あなたの憂いを 払いますこと それこそが私の 務めごと ひとひら残せば また咲くでしょう ひと枝残せば また伸びるでしょう 花ごと落として しまいましたら もう私だけを 見るのでしょう どうしてそんなに 震えていらっしゃる 鍵ならここに ちゃんとございます 「……帰りたい」 まあ 何を仰るのでしょう 帰るところは ここでしょう 愛しております お慕い申しております あなたが何にも 言わなくたって その胸の内まで 知っております 誰にも渡さぬ 離しはしない 誰にも二人を 裂かせはしない 花びらひとつも 残っていない ひと枝ひとつも 残っていない あなたを呼ぶ声 もう聞こえない これでようやく 二人きり ねえ あなた もう私しか 見えないでしょう?