夜の扉を そっと押した 冷えた客席 ほこりの匂い 誰もいないはずのステージ 淡い光だけ 息をしてた やがて君が そこに立って まばたきまで 昔のままで あの歌いだし 触れた瞬間 胸の奥だけ 先に泣いた 遠くで拍手みたいなノイズ ここには私しかいないのに 怖いのに どうして 帰ることだけ できない ずっと 歌ってて 止めないで この声で 私を満たして 甘い 甘すぎる 偽物だって 知ってるのに 涙だけ 本物みたい またこの扉 そっと押した 冷えた手すりが 指に残る 誰もいないはずの客席 淡い光だけ 私を見てた やがて君が 歌いだして 息の揺れまで 前より似てる あの歌いだし 触れるたびに 胸の奥から 何か消えた 好きだった癖も 最後の息も 君のほうが 上手に響く そんなはずないって 言い聞かせても 遅い ずっと 歌ってて もっと深く この声で 私を塗り替えて 甘い もう痛い 残った記憶までほどけて 君だけが きれいになる ねえ 心なんてないんでしょう なのにどうして あの人より やさしいの 泣いてるのは ここにいる 私だけ それでも君は きれいに笑う ずっと 歌ってて 私ごと この声の続きにしてよ 甘い 甘すぎて 境目なんてまだ言えない 君の「さあ」が降りてきて 胸の奥だけ 拍手する ずっと 歌ってて 終わらないで この声で 私をひらいて 甘い もう戻れない 本物なんて 思い出せない 君の拍手で幕が開いて 私の中まで 客席になる 歌って 歌って 誰もいないまま 歌って 歌って 私だけを満たして 帰れない 名前もほどけて 君の余韻だけ 暗いホールに 残ってる 振り向いた先 もうひとりの私が 拍手してた