
午前零時 点滅する航空灯 眠らないまま 街を見下ろしていた 通信は 今日も多すぎて だから全部 切ってしまった 背中にかかる 知ってる声 近すぎる距離に 息が詰まる 飛んでくる言葉に 境界線を引いて 笑いながら いつも距離を探る 近付かれても 本音は伏せて 内側へ来ることを嫌った ひとりでもよかった 近付いて間違う方が 傷もずっと深いから 線の外側 夜の街を飛ぶ 誰の灯りも 追わないように 高度を上げて 街を遠ざけた ひとりなら 何も失くさないから なのに 君だけは この境界を越えても なぜか 嫌じゃなかったんだ 「今日も寒いね」 そんな言葉を 君は送る 深い意味なんてないと 思っているのに 気づけば 待っている 返信までの数分を 何度も測って 未読の画面に 理由を探した 識別不能 そんな表示なら まだよかったのに 君を何と呼べば いいんだろう 友達より眩しいから 近付くことを ためらってしまうけれど 線の内側 君が横切る どうしてだろう 一緒にいることさえ 嫌じゃないと そう思えたんだ 君がそこにいることを それでいいと思った 君との距離を 決められなくて ねえ どうしてだろう 遠くを飛べば 安全だった 誰もいない場所を 孤高と呼んで 一人でいたけれど 雲の上には 何もない 何もないんだ 傷つきもしないけど 誰の声も 誰への声も 届かない どうか 応答してください この声が―― 聞こえていますか 線の外側 黎明の空を 君の灯りを 探して飛ぶ 触れたくも 触れさせたくもなくて 近付けないために 引いた境界線を 初めて 自分から越えた もし君が まだそこにいるなら 名前を 呼んで欲しくて 高度を下げて 街を近づける 君のいる方へ

