
ほどけていく
いいよ、 見てて。 声に、しなくても。 わたし、 ちゃんと、 ほどけて、いくから……。 カーテンの、すきまから 夜が 忍び込む。 うすい灯りだけが、 肌のりんかくを なぞる。 言葉にすれば、 壊れてしまいそうで。 ただ息だけが、 少しずつ、深くなる。 見ないふりしてる、 その目が好き。 えんりょの奥で、 熱を 隠してる。 もっと知りたいなんて、 言わなくてもいい。 わかるよ。 あなたはもう、 ここに 触れてる。 触れないままで、 触れられてる。 視線だけで、 奥を めくられてく。 恥ずかしさと 安心が、 同じ場所で 揺れて。 心のとめ具が、 ひとつずつ、外れてく。 ねえ、 いいよ。 怖くないよ。 見られるたびに、 わたし、 わたしに、 戻っていく。 いいよ、 もっと 見て。 わたしが、 ほどけるところまで。 隠してた夜も、 見せてあげる。 あなたも、 もっと 見せて。 綺麗じゃないところまで。 心を許すって、 こういうこと、かな。 見せるためじゃ、ないのに。 見せたくなる。 隠すほど なぜか、 見つけてほしくなる。 正しい顔だけじゃ、 足りない夜に。 わたしは わたしを、 そっと、ほどいてる。 誰にも渡さない、 秘密の温度。 ひとりで抱えてた、 小さなしょうどう。 でも今夜だけは、 あなたの目に 預けたい。 わたしの奥で、 揺れていた言葉たち。 これは、弱さじゃない。 これは、罰じゃない。 わたしがわたしを、 許していく、ぎしき。 見たいなら、 見て。 見せたいから、 ここにいる。 その沈黙まで、 ちゃんと 受け取って。 もっと、 近くで。 でも、 急がないで。 わたしが、 ほどける速度で、 あなたも、 ほどけて……。 いいよ、 もっと 見て。 整えたわたしじゃ、なくて。 ほどけて、 揺れて、 戻れなくなる。 その手前まで。 あなたも、 もっと 見せて。 欲しがる顔も、 迷う声も。 見せ合うたびに、 深くなる。 心を許すって、 たぶん、 綺麗なままでいることじゃ、ない。 隠してた熱に、 名前をつけずに、 そのまま、差し出して。 それでも、 逃げないでいること。 ねえ、 あなたを、もっと見たい。 わたしも、もっと見せたい。 これはきっと、 触れるより深い、 かんのう。 いいよ、 もっと 見て。 わたしが、 わたしを、 手放すまで。 ほどける夜を、 覚えていて。 いいよ、 もっと 見せて。 あなたが、 あなたを、 隠さなくなるまで。 見たい。 見せたい。 見せ合いたい。 心ごと、 身を委ねたい。 まだ、 見てる? いいよ、 このまま。 ほどけたままで、 いて。


