
ねぇ……まだ起きてる? 「早く寝なさい」 ママの声 時計は九時を 回ってる 青いカーテン 風もないのに揺れて 額の中で 黒猫が笑う 赤いしおり ぱたんと閉じた でもひとりで ページがひらり (まだ起きてる……) 「早く本を閉じて おやすみなさい」 なのに黒猫が 絵から飛び出した つめあと三つ 残して ベッドの下で しっぽがゆれる 「早く本を閉じて おやすみなさい」 次に目を開けたら どこにいるのかな 廊下のはずが 森になってる クレヨンの月が 天井を回る 猫は振り向き 鈴を鳴らして 秘密の階段 降りてゆく 掛け布団まで ふわり浮かんで 「ついておいで」と ひげが揺れる (ついておいで……) 「早く本を閉じて おやすみなさい」 なのに黒猫が 絵から飛び出した つめあと三つ 残して 枕のとなりで しっぽがゆれる 「早く本を閉じて おやすみなさい」 次に目を開けたら 絵の中かもね カチリ 額に戻る音 朝の光が 部屋に満ちる 机の上の 赤いしおりに 黒い猫の毛が 一本 残ってた 「早く本を閉じて おやすみなさい」 壁の黒猫は もう笑わない だけどまぶたの 裏側から 鈴の音ひとつ 近づいてくる 「早く本を閉じて おやすみなさい」 ……明日の夜また 遊びにくるよ 早く本を閉じて おやすみなさい ニャア

