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名前のないさよなら

V4.5+

カーテンが揺れる 言葉をなくした部屋で 微かに残った コーヒーの匂い 「さよなら」さえ うまく言えなかった日々が 天井のシミみたいに 消えないまま 濡れたマグカップ 触れた指の跡 まだ冷たくて でも確かで 僕の中に 君がいた証を 誰も知らないまま 時だけが過ぎる 名前すらないこの想いに 声をあげる術もなくて ここにいた証なんて 今もまだ言葉にできない 僕らは さよならさえ ちゃんと 言えなかったね 空っぽになった棚に 埃が踊る 写真の裏に 何を書いたっけ 昨日より少しだけ 軽くなったポケット 思い出は全部 持っていけないらしい 扉に手をかけた 鍵の感触が 「もう戻れないよ」と 囁いた 決めたはずなのに 足は少しだけ 迷いの中に 溶けていた 泣いても 声にならないまま 残された空気が痛くて ここにいた理由なんて どこにも残せなかったけど 名前のない さよならを きっと 僕は抱いていた 君の笑い声が 一瞬だけ 耳の奥に あれは幻だったのか それともまだ 誰かの祈りだったのか あの音は 誰の想いだったのか 行くしかなかっただけかもしれない この声が掠れても 君を ちゃんと愛せてたのかな 名前のない さよならでも たしかに 心が泣いていた 鍵を閉めた その音だけが 僕のことを まだ憶えている