
遠くからの手紙
April 9, 2025 at 4:22 AMv4
一通の手紙が ポストにぽとり 差出人は まさかのあの人 五年ぶりの便りにしては 字がやたらと 踊っていた 「元気ですか?私はまあまあ 最近ちょっと 猫に振られました」 何のことかと 首をかしげて 紅茶を吹き出し 火傷しました 会わない時間のぶんだけ 言葉の端に 愛がにじむ 笑って泣いて 不器用なまま 今日もまた あの日に帰る 二通目の手紙は ふとんの中に 気づかず寝てて しわくちゃでした 「この前の猫、戻ってきました」 報告いらぬが ちょっと嬉しい 「あなたのことを 思い出すたび 冷蔵庫のチーズが減ります」 なにそれ どんな現象なの でもなんかこう… キュンとくる 離れていても心って 勝手に誰かに 手紙を書く ポストもない 空の下から あなた宛てに 夢が飛ぶ おでんのたまごが 半分に割れた 「ああ、これが…恋か」とつぶやいた 冗談まじりの その一言が 胸の奥で ぐつぐつ煮える 人生なんて 味噌汁みたい だしが効いてて ちょっとしょっぱい でも最後の一さじすするたび 「生きててよかった」って思うんだよね 三通目の手紙は 白紙でした 「言いたいことが多すぎて」だって それでもちゃんと 届いた気がした 遠くからの あなたの手紙 - kakuni324 © Copyright 2025 -

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