甘い余韻

ほのかな熱を残すフライパン 絡み合うソースは甘くて苦い ゆっくりと箸をのばすたびに 思い出す　あの夜の声 白いお皿に落ちた影 「またね」と言えなかった帰り道 滲んだ街灯　雨の匂い 心に残る　照りの余韻 甘くて　ほろ苦い 恋の味が　舌に広がる 君の仕草　横顔さえ じんわり染み込んで 忘れられない ラジオから流れるメロウなコード 揺れるグラス　氷が溶けて 「いつかまた」なんて言えたなら 少しは楽になれたかな テーブル越しの指先に 言葉よりも伝わるものがある 滲んだソースの跡さえも 胸を締めつける　夜の余韻 甘くて　ほろ苦い 恋の続き　まだここにある ふたり過ごした時間だけが 心の中で ほどけていく 静かな夜に浮かぶ　街の灯り もう少しだけ　このままで ぶりの照り焼きみたいな あたたかい夢を見せて